日本エネルギー会議

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支配される組織

 己を捨て、他人のために何かをなしたい、とひたむきに生きた江戸時代の三人を描いた評伝、「無私の日本人」(磯田道史著)がいま評判だ。今日の我欲剥き出しの世相が人々を無私に惹きつける。私は以前に、私欲など邪(よこしま)な考えが、物事をねじ曲げ、自然の脅威への警告を軽視し、市民の安全を脅かすことになることをエッセイで書いたが、現代では多くの場合、組織を通じて実行される。何故、組織が邪な考えを持つ人たちによって支配されるようになるのか。
 それは組織が一定の成功をすることによるものと私は考える。組織が大きくなり、安定した経済的基盤を持つと、かならずしもすべてが合理的な判断や行動によらずともよくなる。組織がまだ生まれたばかりで、その存立さえ危うい時には、要員的にも経済的にも非合理なことをやっている余裕はない。これに対して、一応の成功を収めた組織は、要員的余裕が出来るので、能力や努力が伴わない人がいたとしても、解雇することなく雇い続けるため、次第に平均的な社員の能力は低下し、抱えている人数能力ほどにはパワーが出なくなるが、これを組織力で補うようになる。全体で収支が均衡すれば個々の出費の合理性はそれほど問われない。まるで大型車のように見かけは堂々としているが、車体が重く、燃費が悪くなり、機敏な動きは苦手となるのだ。
 一定の成功を収めた組織では、仕事面だけでなく、組織全体をまとめる能力が重視され、太っ腹で温情あるリーダーが評価される。組織では、数が力であり、各部門は人数を抱え込もうとする。人数が多くても、実際に仕事が出来るのは二、三人で、実力がある人に重い負担がかかるようになるが、組織の安定的な存続こそが己の生活の安定のもとと思うから、お荷物になる人を追い出すことはしない。
 成功した大組織はさらに生産性を上げるために、安易に業務を外注しがちだ。一度決めた外注先は固定化され、そこに頼り切るようになり、甚だしい場合は、契約につける仕様書の下書きまで頼むことになる。この結果、社員の仕事は計画・予算の管理、外注管理が主なものとなる。受験戦争を勝ち抜き、一流大学を出た賢い人たちが、管理中心の仕事につけば、その能力はもっぱら管理上の矛盾や問題を、いかに綻びを見せないようにするかに使われる。そのための徹底した根回し、情報の管理、交渉相手への示唆、発注者の負担とリスクを最小にするための工夫、法律の抜け穴を探し、形だけは整えること、予算獲得のための誰も反対出来ない理由づけ、役人の仕事を一部代行し貸しを作る、天下りポストの提供や人や仕事の紹介などで便宜を図るなどである。組織が小さく経済力もなければ、そんなことはやっていられないが、大組織の看板と経済力があれば可能だ。
 利益を得ようと近づいてくる外部の企業や団体、あるいは妨害しようとする者もいる。

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