日本エネルギー会議

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感動を与えた川内村の頑張り

 昨日、台湾行政院原子能委員会の調査団3名とともに、福島第一原発の事故からの復興を進めている川内村を訪問した。除染の状況や復興の様子を直接見たいというのが彼らの目的である。役場では多忙な中、復興対策課長や除染の係長に長時間、親切に対応していただいた。台湾行政院は昨年も12月に来日し、郡山市にあった富岡町や川内村の仮役場や仮設住宅を視察しているので、代表の陳さんに会うのはこれで二度目だ。
 郡山駅から終日チャーターしたタクシーに乗り込んで、国道288号線で川内村に向かう。昨年の3月16日に、一次避難していた川内村から二次避難のために郡山市に向かった道だ。途中で昼食用に弁当を買うことにしていたが、復興対策課長が、川内村に新しくコンビニを誘致したので、是非そこで買って欲しいと言うので、役場に行く前に立ち寄った。役場の裏にある消防署(かつて身体汚染検査場であった)の脇のファミリーマートは真新しく、
大変な繁盛ぶりだった。その前には福島県のナンバーワン地銀の東邦銀行が移動ATM車を設置して、行員と警備員が立っていた。少し離れたところには地元産(!)の野菜などを売る真新しい直売所がある。その先には「かわうちの湯」という温泉施設があり、料金は100円。夕方になると除染の作業者で満杯だそうだ。
 役場の会議室で、課長からカラー印刷の資料で、いままでのいきさつや現状などについて詳しい説明を受ける。年配の台湾人の石さんは日本語が堪能なので通訳をする。親の代は皆、日本語が出来たという。視察者は大変多くて、村で用意した資料も素晴らしい出来である。ただ、国内の自治体の視察は少ないというのが気になった。
 もともと川内村は東日本大震災のとき、人口が3038人。12月5日現在、戻っている人は419人、まだ避難している人が2536人で、この間に死亡した人が83人となっている。避難先は仮設住宅のある郡山市が1368人、いわき市が380人、隣の田村市が136人だ。週末以外は川内村にいるという人も600人ほどいて、平日の人口は約1000人となっている。高齢者の多くが戻るなか、子供の避難に合わせて、20代から50代の親の世代が戻らないのが痛いという。
 これに対して全国各地から来ている除染の作業員の数は1000人を超える。その人たちの宿舎や出張者用のプレハブの簡易ホテルなどがいくつか建っている。生徒のいなくなった高校や営業停止している保養施設をゼネコンが借りて作業員の宿舎に当てることも行われている。コンビニやガソリンスタンドやラーメン屋の繁盛はこの人たちに支えられている。
 川内村といえば、昨年の4月、双葉郡8町村の中で先頭を切って帰還宣言を行ったり、遠藤村長がウクライナ視察をしたりしたことで知られている。復興対策課長は原発に近い割に盆地であったため意外に線量が低いことに気づき、いちはやく帰還宣言をしたことが除染作業を後押しし、今日の早い復興につながったと語った。確かにどこでも線量は毎時0.15マイクロシーベル程度と低く、郡山市とあまりかわらない。
 その除染活動だが、雪もちらつく12月半ば、村内どこへ行っても除染作業が行われている状況だ。村の年間予算が30億円なのに対して、除染の予算は70億円だという。道路は切り取った木の枝や青いビニール袋(一つ18000円するという袋が何千とある)に入れた汚染土壌を積んだダンプが頻繁に行き交っている。四ヶ所計画のある袋の仮置き場も既に二つが稼働している。それは山の中にあって道路からは見えない。積み方を工夫することで外側の線量は低く抑えられる。一番上には緑色の紫外線防止のシートを張って青いビニール袋の劣化を防いでいる。また、仮置き場として土地を提供してくれるありがたい地主もいるという。
 山の斜面の下草を刈ったところは、上から除染していない土が落ちてこないように低い柵をめぐらしてある。心配していた山林内の汚染が移動することはほとんどなく、家の周囲は新しい砂利を敷き詰めるという徹底ぶりで、村全体が散髪屋に行ってきた感じだ。掘り起こした畑は地中にあった石コロが表面に出てくるので、この石を丹念に地元の高齢者に拾わせている。この作業も良い日当が出るので喜ばれているらしい。この調子だと年内にもほとんどの宅地と敷地境界から20メートルの山林までの除染が完了するという驚きの速さだ。
 話を聞いていると、こうした除染作業で得られたノウハウは大変なものだ。この他、誘致した野菜工場(LED照明でサニーレタスを屋内で作るのだが、販路が心配だという)、電子部品の工場などの建設、公営住宅の建設も始まっていて、村中が活気に溢れている感じがする。台湾から来た人たちも盛んにカメラのシャッターを切っている。冷静に見れば、これは一種の「除染作業バブル」であり、除染がひと通り終わり作業員が引き上げたあとに、
ショックが来るのではないかと心配になる。これを緩和するために、村内企業のJVが村内除染の経験を活かして、これから除染が始まる地続きの富岡町や楢葉町の除染工事に進出を果たすことだ。
 台湾行政院一行の感想は「皆が懸命に取り組んで、成果を上げているのを見て感動した」であり、私もまったく同感なのだが、彼等がなんだか昔の日本人のような感じ方をしているとも思えた。

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