日本エネルギー会議

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やらねばならない課題

 あと一日で除夜の鐘が鳴る。早いもので、新年には福島第一原発事故からニ年目となる日が来る。今年は三つの事故調査委員会の他、さまざまな機関で事故の検証や分析が行われた。報告書発表の時は世間の注目も浴びるが、それが終わると判ったことや提言をどのように具体的に対策として形にして行くかという地道な作業が待っている。それが進んでいるようには感じられず心配していたら、年末になって三つの事故調査委員会が合同でそのフォローアップをしていこうという動きがあった。
 福島第一原発の事故の原因は、直接的な原因と間接的な原因がある。さらに原因を作り出した背景が存在する。その中身は法律、制度、環境、歴史、文化、価値観などである。原子力推進をする国や電力会社を始めとする業界はもちろん、立地自治体や住民もそのような背景の一部である。国会事故調の委員長がいみじくも「メイドインジャパン型の災害」と評したように、社会そのものに深く起因する問題が複雑に絡み合って、事故の原因を作り出してきた。
 原発の再稼働を目指す各電力会社は、津波対策の防潮堤建設や非常用電源の増強など現地での安全対策を進めている。それらは主に直接的原因に関するものである。原因の原因やその背景に手をつけず、対処療法的な対策しか取らず、新たな対策に腰が引けるような体質のままであるとすれば、原発という潜在的危険がある装置を任せるわけにはいかない。また、電力会社と渡り合える力を持たない役人根性丸出しの規制当局では、国民は安心出来ない。国民が、従来原発の開発を国と電力会社に任せきりにしてきたという問題もある。
 福島第一原発の事故原因は、現地で安全対策を追加すれば済むといった単純なものではなく、根の深いものと認識する必要がある。いずれの事故調の報告書もそのことに触れているが、ほとんどの場合、提言は抽象的なもので終わっている。その理由は、委員会には原子力村の内部にいた人間がいなかったこともあって、直接的原因がどのような間接的原因で作られ、それがどのような背景を持っているかの事実関係の確認と分析が十分に出来なかったためである。
 この問題の難しさは、原因の原因を追いかけて行くと、その範囲がどんどん広がって、結局何が問題なのかがわからなくなることである。法律が悪かった、政治家が悪かった、役人が悪かった、企業経営者が悪かった、学者が悪かったとなり、結局誰の責任でもなくなってしまう。また、一人ひとりが頑張っても、組織となると如何ともしがたいことは多くの人が認めるところだ。直接的原因から間接的原因へ、さらにその背景に糸を手繰って行くのは大変な作業だが、今回こそ途中で諦めるわけにはいかない。
 何故、日本が無謀な戦争を始め、いつまでも終わらせることが出来なかったか、日本はその総括がずっとできなかったが、戦後六十年経って、ようやくそれに正面から取り組む学者も現れた。福島第一原発の事故も現場は片付かず、未だに避難者が何万人もいる状態であるが、日本社会の特質や国策民営で進めた原子力開発のあり方が、どのように事故原因に絡んでいったかを解き明かすことの手を緩めてはならない。そうしなければ、原子力規制委員会がどのような新安全基準を作ろうが、どのように厳しい審査をしようが、日本社会の持つ「なにか」によってまた大事故が引き起こされるからである。

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