日本エネルギー会議

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なしのつぶて

 「なしのつぶて」とは連絡をしても返事のないこと、便りのないことと辞書にある。つぶて(礫)とは投げる石を指す。投げた小石は返ってこないことから、音沙汰のないことを言うようになったのが語源のようだ。
 原子力事故で被害を受けた人が原子力事業者に対して損害賠償を請求する際に、円滑・迅速・公正に紛争を解決することを目的として設置された公的な紛争解決機関がADRだ。福島第一原発の事故を受けて、原子力損害賠償法に基づいて、原子力損害賠償紛争審査会のもとに設置され2011年9月から業務を開始した。事業を行なっていた者が風評被害なども含めて請求するだけでなく、個人も申し立てが出来る。
 ところが、最新のデータによれば、ADRに申し立てた約5000件のうち、約600件が取り下げ、打ち切りとなり、残りの約4400件のうち、和解成立したのが約1500件に過ぎない。このうち全面和解は約1100件だ。
 東京電力が行なっている賠償請求で、東京電力からの賠償提示額に納得できない被災者からの申し立てを郵送で受けると、弁護士である調査官が被害の内容を調べ、その結果をもとに仲介委員が双方の意見を聞いたうえで、和解案を出すことになっている。
 実際にADRに申し立てを行った人の話では、昨年の8月に最初の書類を提出し、何も言ってこないのでADRに電話をすると、仲介委員となる弁護士の指名に時間がかかっているが、決まれば通知するとのことだった。待っていると9月中旬になって仲介委員が決まったとの内容の文書が郵送されてきた。9月下旬になると突然、東京電力の代理人という弁護士から「申し立ての件についてADRに答弁書を提出した」との手紙が到着。内容は全面的な否認であった。東京電力はなかなか素早い対応をしている。
 ADRからは何も言ってこないので、こちらからADRの担当調査官に電話を入れると追加の資料があれば出して欲しいとのこと。早速追加資料を10月上旬に提出したが、3カ月経った今も、資料を受け取ったとも、内容がどうかとも言ってこない。もちろん和解案も示されていない。
 ADRは当初、申し立てから3カ月程度で和解案を提示するとしていたが、申し立てが増加するばかりで業務が進まず、昨年4月には、「現在5~6ヶ月かかっているものを3~4ヶ月に短縮を図って業務の正常化をする」とのコメントを昨年4月に出している。また、のらりくらりの東京電力の対応にしびれを切らしたADRは東京電力に対して、故意に返事を長引かせたりした場合には延滞料を加算すると警告もした。
 裁判ほど費用と時間をかけず、速く解決することを目指しているが、弁護士の数がまったく不足しているのと、ADRが示す和解案に従う法的義務が東京電力にはないことが遅れの原因となっているようだ。

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