日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

【事務局】 緊急シンポジウムのご報告

1月25日(金)開催した「活断層問題緊急シンポジウム」(於:東京工業大学くらまえホール)はおかげ様で盛況のうちに実施することが出来ました。

第1部では4人の専門家から「活断層」や「地震動評価」などについて短いレクチャーを受けました。普段あまりなじみのないテーマだけにちょっと難しく感じられた方が多かったように思いますが、後半第2部は水町渉氏の好リードのおかげで一転、大変分かり易く核心をついた議論が展開されました。

当会議発起人代表の有馬朗人先生は冒頭と最後にスピーチをし、冒頭では地震の際の活断層の危険性に対する工学的研究・対策の必要性を説かれ、シンポジウムの最後には「国、事業者、学者が『原子力の安全な利用』という同じベクトルを再確認し、力を合わせて問題を解決して行こう。今こそ科学・技術者の信頼を取り戻そう。」と話し、日本の科学者の良心と情熱を伝えました。

各講演者・パネリストの発言要旨は、下記の通り。

山崎晴雄教授(首都大学東京)
「12.5万年前というのは後期更新世(最終間氷期)以降を指すが、これを40万年前まで遡れば安全が高まるかというと決してそんなことはない。だいたい地層中に40万年前の地形が残っているところ自体が少なく、結局は『よくわからない』という要素が増えるだけ。
強い地震動が起きるのは地下深部(3~20km)であり地表付近ではない。断層の上だけ特に地震動が大きい訳ではなく、建物への影響は活断層より地盤条件の方がはるかに大きい。さまざまな俗信をマスコミが煽ることで不安が増幅するが、これを打ち消すためには具体的な対策が有効。
活断層は日本中にあり、それを避けていたら原発は出来ない。そのような発想ではなく、日本には原発が必要なのだから活断層も地震も乗り越える工学的なチャレンジが必要。このシンポジウムで度々『川上(断層、地震など地質学的領域」)、『川下(建築、土木、工学的領域)』という表現が使われたが適切ではない。これからはそれぞれの分野が連携しながら総合的に知見を蓄えリスクを低減していくアプローチが大切。」

釜江克宏教授(京都大学)
「日本列島の周辺には4つのプレート(北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)があり、それらが少しずつ移動するときにプレート境界や内部に大きな力が加わり、そこがずれるときに地震が生じると考えられている。地表の揺れが何によって決まるかというと、①震源特性(震源の断層がどのようにずれるか)、②伝播経路特性(地震波がどこを通るか)、③サイト増幅特性(立地の地盤と地震波の関係)、この3つの要素がすべてといっていい。

最大の地震動は必ずしも断層の真上に発生する訳ではなく、1995年の兵庫県南部地震では震源断層直上ではなく、震源断層から1~2km離れたところに被害が集中した。これを教訓として断層モデルによる地震動評価の手法が導入された。震源には地表からもわかる震源と、地表に明瞭な痕跡がないため特定しにくい震源があり、特に特定しにくい震源の地震動評価は難しい。

岡本孝司教授(東京大学)
「原子力安全は総合的リスクを低減すること。活断層は原子力発電のリスクの一つであり、他にもリスクはたくさんある。本来原発の安全性を高めるという目的であれば、すべてのリスクを総合的に評価し、それに対し工学的見地やマネジメントの視点などからどのように対策を講じて行くかを考えて行くのが筋。活断層だけに注目しすぎると他のリスクへの対応がおろそかになり、結果として原子力の安全性は間違いなく低下する。原子力の安全性を高めるというゴールに向けて各専門家が領域の垣根を取り払って取組むべき時だ。」

奥村晃史教授(広島大学)
「これまで事業者と耐震の審査委員が4年間にわたってバックチェックの作業を行ってきた。それは事業者による詳細な調査データをベースにした科学的な議論だった。そこには癒着やなれ合いなどはなく、相当緊張感を伴うハードなものであった。例えば敦賀原発、浦底断層からの地震動は確認済みで問題なしとの結論が出ているにも拘らず、現在の規制委員会は過去の調査検討を一切無視、排除し断片的な情報を基に判断を下そうとしている。これを看過することは出来ない。・・・規制者は事業者を信頼する事から始めなければ決して安全性は向上しない。」

水町渉氏(モデレーター。IAEAシビア・アクシデント・マネジメント委員会初代議長)
「かつてアメリカでNRC(米原子力規制委員会)とNEI(米原子力エネルギー協会)のトップが一堂に会する会議に出席した。スピーチでNRCの会長は『我々には米国民の財産と生命を守る義務がある。そのために原子力の安全を監視する』と発言し、それに続いたNEIの会長は、『我々の目的は原子力の運転により利益を出すことと、電気を安定的に供給することだ。従って事故を起こすことは許されず、原子力の安全に努めなければならないのだ。』と述べた。大事なのは、目的は違うが原子力の安全を追求するという点では一致するため、規制側も事業者側もお互いを信頼し、安全性向上のため協力することが大切というコンセンサスが存在しているということ。我が国も上下関係や形式主義を払拭し、冷静に、科学的判断に基づいて原子力の安全を高めるという考え方を根付かせよう。」

今回の来場者数はほぼ300名。マスメディアもNHKはじめ多くの報道機関が詰めかけました。次回は2月9日(土)同会場にて田原総一朗氏を招き、さらに深く議論を行いたいと思います。次回も是非ご参加ください。

2013.1.28
事務局長

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter