日本エネルギー会議

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インフラ維持の制度化

 中央道笹子トンネルの事故が起きて、「花の建設、涙の補修」の実態がクローズアップされた。長期に供用される大規模な建造物や装置など(数千億円を投じて数十年も運転する原発はその代表であるが)をどのように維持し、更新していくかは安全と直結する大きな問題だ。世界中で橋が落ちたり、建物が倒壊したりしているが、日本も維持管理がうまくいっている社会とは思えない。
 維持、更新するには「情報」と「人」と「金」が必要であり、どれが欠けてもうまくいかない。「情報」は建造物や装置が建設時の設計図や強度計算書など、以降どのような使われ方をし、どのような補修がされてきたのかを記録した履歴が中心になる。
 日本でも数十年も経った古い橋は設計図がないため図面から作成している。原発も日本最古の商業用原発である東海発電所では、燃料交換器の補修部品を作るために現物をスケッチして設計図を作成した。設計思想などは図面からだけでは伝わらない場合もある。「人」はOJTなどで技術伝承が行なわれるが、指導者と後継者をそろえて時間を掛ける必要がある。
 最大の問題は「金」であり、古いものほど費用がかさむのと、公共団体や企業の財政状態が直ちに補修予算に影響するので、なかなか確保が難しい。先送りを繰り返していると、最後に大変なことになる場合もある。塗装や消耗品の取替をこまめにやっておく方がトータルでは安くつくが、なかなかそれが出来ない。
 我が国でも、建造物や装置など長期に使うものに対して、補修が適正に行なわれるにはどうすればよいのかについての研究とその成果を活かした制度面の充実が不足している。規制に従った地下タンクの改修や取り替えが経済的に出来ず、ガソリンスタンドが次々と廃業に追い込まれているが、安全確保のためには止むを得ない。
 三重県四日市市と言えば、公害問題で有名だったところだが、市は化学工場などに対して固定資産税を半額にするなどして古い設備を更新することを支援している。原子力規制庁が7月に新基準を出すが、古い原発は残りの運転期間も短いので、電力会社は改修をするか廃炉にするか判断に悩みそうだ。我が国が原発の「世界最高水準の安全」を目指すのであれば、こうした制度面のバックアップも考える必要がある。

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