日本エネルギー会議

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市場原理主義の優位

 市場原理主義とは市場原理に全てを任せれば何もかも解決するという考え。アメリカの経済が、世界中で最も市場原理主義に近いと言われている。そのため、アメリカの原発も市場原理主義が貫かれている。アメリカの原発関係者がいつも考えていることは、「利益」である。しかも、半期毎の決算を気にしている。彼らは株主の機嫌と、保険業界の評価にきわめて神経質である。
 高い稼働率を誇っているアメリカの原発の現場では、アメとムチによって猛烈な経済性の追求がなされている。定期検査期間を短縮するために、期間中はスタッフを二つのグループに分けて、完全二交替制の勤務にしている。定期検査が延びれば保修部門の責任者の首が危うい。計画より1日でも短縮出来れば、ボーナスが待っているので皆、目の色が変わっている。事故を起こして長期に停止すれば所長が更迭され、会社が株主から見放される可能性もある。
 現場の作業では日本では二人かかりの重い部品を一人で持ち上げる。昼食時、事務所の食堂まで戻らずに休憩所で食べている者もいる。規模の小さな電力会社も多いことから、運営面でも運転年数延長のために、設備の更新ではなく、出来るだけ紙の上の評価によって許可を取ろうとするなど危うい面もないわけではない。現場だけではなく、規制当局と電力会社、メーカー間も慣れあいは感じられない。業界団体であるNEIのスタッフは、スポンサーである電力会社などの主要メンバーから活動評価会議で厳しく追求されるので、その日のために一年間頑張っているようなものだとこぼしていた。
 こうした状況は、日本の護られた穏やかな原子力業界と比べるとまったく対照的と思える。何代か前の東京電力の社長は社員に向かって「普通の会社になろう」「兜町を見て仕事をしよう」と言ったほどだ。日本で関係者に原子力をやっている目的を問えば、「我が国のエネルギー確保のため」「環境に優しいエネルギーを増やすため」などの答えが返ってくる。共通の夢を持つ原子力村の中では互いに気遣い、規制当局とは「虜」と疑われるような親密な関係になっていた。業界団体などで、事務局がスポンサーから詰問されるような場面はほとんど見たことがない。緊張感という面では明らかにアメリカに軍配が上がる。
 原子力安全を確保するには、組織間の緊張感が不可欠であることを考えると、鄧小平の「白い猫黒い猫」のように、市場原理主義のアメリカ社会の方が、エセ資本主義の日本社会より、まだましではないかと思える。日本社会では、慣れあいが原因の不祥事の後は、一転して一切の非公式面会や対話が禁止され、情報交換も閉ざされるなど極端に走りがちだ。「親しき仲にも礼儀あり」ではないが、社内も社外も適度な緊張の中で、良好なコミニュケーションが出来るようにするべきだろう。そのためには、全体として情報公開をさらに進めること、「切磋琢磨」が生ずるよう第三者による比較や格付けが行われることが必要である。

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