日本エネルギー会議

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わかりやすい説明

 福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、深刻な事故への対策を電力会社に義務付ける新たな規制基準の案が、原子力規制委員会で了承された。メディアは早速、この基準で7月意向の新基準に基づく原発の審査で再稼働がどうなるのか、古い原発が淘汰されるのでは、と先読みを始めている。原子力規制委員会の田中委員長は10日の記者会見で「世界レベルに負けない基準になった」と述べたことが伝えられている。新基準には防潮堤の建設、非常用電源の多重化多様化、免震重要棟のような設備の整備、フィルターベントの設置、電源ケーブルの不燃化などが盛り込まれているが、それでどの程度大丈夫なのかという一般国民の疑問には答えられていないのではないか。
 このわかりにくさは、私が現役時代に教育用のシミュレータをスエーデンに発注した時のことを思い起こさせる。ベテラン運転員など技術系担当者が細かな設備仕様を出して、その通りにハード・ソフトが出来上がって日本にきたが、どのように検収のための試験をすればよいか、最後の段階ではたと困った。そこで最後には事故時の運転操作マニュアルを実際にやってみてそれがうまくシミュレーション出来るかどうかで判断しようと決めた。
 当たり前の話だが、新基準は再び原発で過酷事故を起こさないために作られたものだ。そうであるならば、福島第一原発の事故で明らかになった様々な問題について、この基準を満たしていれば解決が出来ることを証明しなくてはならない。
 例えば地震で再び外部から送電が出来なくなり、同時に津波に襲われた時に炉やプールの冷却はどのように行われるのか、運転員は真っ暗な中で再び不安定な計器と戦わないで済むのか、発生した水素はうまく逃されるのか、モニタリングポストは止まらないのか、住民にタイミングよく逃げる方向をしっかり示すことが出来るのか、入院患者や要介護者は行き場があるのか、事故対応は誰が統率するのか、対応する技術者集団は確保出来たのかなど、具体例で説明をしてもらわねば、一般国民は新基準が役に立ちそうなのか判断できない。
 この他にも事故後にメディアが報じた頼りにならない水位計の問題、地震で壊れたかもしれない計装配管の問題、脆弱な燃料プールの問題、若い運転員の知識技量の問題など記憶に残っている問題について、今回の基準でクリアーされたのか、説明してもらわねば、まったくわからない。全国の原発立地の住民は、防潮堤の高さだけでなく、当該原発に来ると想定する津波の大きさをどうやって推定したかについてぜひ知りたいと思っているはずだ。こうした疑問について、住民から求められなくても原子力規制委員会や電力会社は再稼働前にわかりやすく説明する必要がある。そうでなければ、専門家だけの独りよがりの安全となり、住民にとって福島第一原発の事故前の状況と変わらないことになる。

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