日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

ある決断

 福島県に常葉町という町がある。福島県の観光案内によれば、その町に常葉振興公社が経営する「カブトムシ自然王国」がある。福島第一原発のある大熊町から県内随一の商都郡山市に行こうとすれば、通称「ニーパーパー」と呼ばれる国道288号線を使うしかないが、常葉町はその国道沿いにある。その先の船引三春を通過して郡山市である。
 大熊町で若い時から一人親方職人をし、今回の事故で避難してきた知人と郡山市で先週行き合った。これからどうするつもりかと尋ねると「常葉町に住もうかと思っている」とポツリと漏らした。大熊町役場の近くに借地で30年ほど前に建てた家に住んでいたが、今回の賠償で建てた当時とほぼ同じくらいの金が貰えそうなので常葉町なら家を買えそうだという。建物の賠償の他に、借地権を持っていたので土地の賠償の3割を借主が貰えるらしい。
 「便利な郡山市の借り上げ住宅に暮らして、いまさら山奥は大変だろう」と言うと、「山歩きや渓流釣りが好きなので、やっぱり田舎が良い。郡山市では土地が高いし、都会では息が詰まる。歳は60に近いが今のところ元気なので大丈夫だ。仕事はあちこちにあるし車で行ける」と答えた。仕事や子供のことで郡山市やいわき市など都会に移住する決断をした人も多いが、自然と接する生活を望む人もいる。大熊町のように線量が高く帰還困難なところでは、なおさら元の生活に近いものを望むようだ。
 今、福島県では避難者が家や土地を探しており、ちょっとした不動産バブルが起きている。建設資材や労賃も上がっている。人気のいわき市ではもう土地がなく、湯本や四倉など郊外に土地を求める人が増えている。区域再編や財物の賠償基準が決まったことで、避難住民はこれからの生活設計を立て行動を始めようとしている。
 いままで、精神的損害に対する賠償金をパチンコに全部使ってしまった話があったが、賠償も今回の財物賠償が大きな金としては最後になる。足が地についた計画性のある使い方をしなくてはならない。精神的損害や財物に対する賠償には税金がかからないが、就労不能や事業主に対する賠償は課税されることが決まっている。今年の暮れの確定申告や青色申告では、思わぬ多額の税金がかかってくることも忘れてはならない。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter