日本エネルギー会議

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「原発推進者の無念」の著者が原発事故後の心境を語る その165

 いつもエッセイを読んでくださっている方から、最近お送りした「ドリームチーム」に対して、ありがたいコメントを二つ頂きました。ひとつは、原発事故の対応を支援するチームには、各分野の専門家を集めるだけではだめで、全体がわかる人を入れるべきであるという指摘です。
 おっしゃる通りだと思います。そもそも原発自体が原子力、電気、機械、化学、土木などなど専門技術を集めて巨大な発電装置として形にしたものですから、対応する人間の方もそれぞれの分野の専門家と、それをまとめる人が必要なのでしょう。設計製作からしてそのようにして行われています。
 ただ、全体が分かる人は専門分野もある程度理解出来なくてはならず、そのような人は、原子力界でもなかなか見当たらないと思います。能力について「T字型」でなくてはならない。専門性だけを深くするだけではなく、幅も広げることが必要だということです。
 これはなかなか困難なことであり、分野の二つ三つカバー出来れば、大したものだと言えます。私のいた原子力専業の日本原電でも炉主任、当直長(運転責任者)、保修課長を歴任した人はほとんど思い浮かびません。それに電力会社の場合、運転以外は現場の実務を外注化してきたので、新たに直営作業の経験も必要になるかもしれません。一方、メーカーの方では運転操作の経験が不足しがちです。
 自動車業界で、よく開発チーフエンジニアが得難い人材だ、と言われているのと同じようなものだと思います。意図してそのような人材を育成しなくてはならないのかもしれません。また、技術的なセンスも必要ですし、全体をまとめて専門家をうまく使いこなせるチーフエンジニアとしての能力を鍛える必要があります。
 この点、EDFとアレバの合同訓練を見学した経験から言えば、フランスの対策チーム(メンバーは全員アレバの職員)は10人程度の各部門の専門家を集めて作られていました。チームリーダーはいましたが、見ているとメンバー同士が活発な議論して、合議制のようでもありました。この点はもう少し調べるとよいと思います。月に一回訓練をしていましたが、最大二日くらいもやるので、この訓練が自分の専門外の知識を得るのに役立っているように思われました。
 頂いたコメントのふたつ目は、日本が誇る「京」のようなスーパーコンピュータを事故対応に活かせないか、というご提案でした。これについては、良いアイデアだと思いますが、どのような条件をインプットするかが問題だと思います。事故を起こした原発は、炉内の水位など現場のデータなり情報が十分に取れないところが弱点ですから、そこをどのようにするか考えねばなりません。いくつかの条件を変えたものを入れ始めると、コンピュータ将棋のようにそのバリエーションはとんでもない数となり、計算は幾通りもできたがどれを選択するかという難問が出てきます。現場のデータがあやまって来れば答えはちがってきます。
 この点、フランスでは事故訓練の際に、EDF側が偽のデータをチームに与えて、これを見破る訓練をしていました。「京」も偽データで鍛えておく必要があるかもしれません。パリのアレバ本社地下にある訓練室の隣には、シミュレータが設置されてそれも使っていました。日本の緊急対策室にもシミュレータを併設しておくことが考えられます。いずれにしても、私の調査は古い話なので、今どうなっているか、フランスだけでなく他の国も含めて調査し、検討を深める必要があると思います。

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