日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

家の賠償はどのように行われるのか

 福島第一原発の事故による賠償が、財物の請求により山場を迎えようとしている。多くの被災者にとって家は最大の財産であり、賠償の金額も数百万円から数千万円と多額だ。東京電力やこれを支える国にとっても、賠償金は数千億円になる。福島県では双葉郡も含め、持ち家率は高く、高齢者のほとんどは親の代からの持ち家だ。
 警戒区域に住んでいた被災者は、既に二年以上も家を離れているが、家の状態は地震で壊れた屋根から雨風が入り住めなくなっているもの、閉め切っているのでかび臭いが、戻れば住むことが可能なものなどさまざまである。東京電力は、それには関係なく、家の市場価値が失われたことに対して賠償をするとしている。
 東京電力が被災者に送ってきた請求書類には、賠償金額を決めるのに三通りの方式が提示されている。一つ目は定型方式で、これは直近の家の固定資産税評価額(各自治体では、実際の市場価格よりかなり抑えて税が多すぎないようにしているのが実態)に一定の係数を掛けて算出した金額を賠償するというもの。いろいろなデータから現在の市場価格になるよう、建築した年毎に係数が作られている。また、福島県の新築価格単価に床面積を掛ける算出方法も使えることになっている。
 二つ目は、個別方式と呼ばれるもので、家を建てた時や買ったときの領収書見積書などを揃えて、それに経過年数などを勘案した査定をするもの。三つ目は、現地評価と呼ばれるもので、不動産鑑定士に現地に行って見てもらい、査定金額を出してもらうものである。報道されているように、旧警戒区域は「帰還困難区域」など三つの区域に再編されたが、家のある区域に応じて、賠償金額に差が出るようになっている。家の建っている宅地、車庫や作業小屋などの構築物、それに庭木なども同時に賠償されることになっていて、賠償額算出基準が示されている。
このように書くと、家の賠償は順調に進んでいるように思えるが、実際には様々な問題があり、被災者たちは戸惑っている。

(1)方式選択の問題
 三つの方法の中から一番有利な方式を選択出来るとされているが、古い家では領収書や見積書が残っている可能性は少ない。また、現地評価は東京電力の雇う不動産鑑定士が行うので、どこまで評価してもらえるか不明だ。もし、現地評価を選択すると、そのとたんに他の方法には戻れないことになっている。その理由として東京電力は現物評価に勝る評価方法はないからだとする。定型方式や個別方式の金額に不満でも、万一、現地評価でそれよりも低い金額が出てもあとの祭りだ。これでは、現地評価を選ぶことが賭になる。

(2) 係数の問題
 係数は木造かコンクリート造りかなど構造と建築後の年数によって細かく決められている。例えば木造の場合、事故直前の平成22年に建てた家の係数は2.46でこれを固定資産税評価額に掛けると賠償額が出る。また、同じく平成元年に建てた家の場合、係数は5.47である。古い家では、価値がほとんどなくなりそれでは家を新たに求めることは無理になるため、古いものほど係数を大きくしてある。昭和36年以前に建てた古い家の場合、この係数は9.28だ。これだと家の固定資産評価額が100万円であっても約1000万円と評価されることになる。先祖伝来の古い家で喜んでいる人がいる一方、ローンで建てて10年もしていない人は不満だ。ダムや高速道路工事などで強制収用された場合と比較して少なすぎると考えている人もいる。

(3) 相続の問題
 田舎では、祖父や曽祖父が建てた家に住んでいて、土地も家も名義が亡くなった人のままになっていることが結構ある。賠償を受けるにはまず、親戚の了解を取って登記しなおす必要がある。これは大変厄介な問題で、なかなか賠償のスタート地点にたどり着けないケースが出ている。賠償金を得ても、兄弟などに分けてやらなければならない場合も考えられる。

(4) 消費税などの問題
 個別方式では、工事請負金額から敷地造成工事費や開発申請費用、手続き費用、不動産取得税や消費税それに登記関係の費用は除くとなっている。他の方式でも考え方は同じだ。東京電力は家の価値そのものの下落について賠償するから、それらの費用は除くとしているが、実際に家を購入した際には、いやおうなしに取られている。被害者が新たに家を求めれば、再びこれらの費用を支払わねばならない。家は金額が大きいのでこれらの費用も馬鹿にならない。賠償で生活再建と考える人には、納得がいかないことだ。

(5) 時間がかかりすぎる問題
 去年の暮れまでに不動産などの賠償受付を開始するとしながら、東京電力が実際に賠償請求書を配布したのは4月になってから。今回は請求書は二回提出しなくてはならず、第一回目で所有している土地や建物の確認をする。しかし、第一回が到着したのが5月末、それを提出し、第二回目(定型方式を選択した場合、いくらになるか試算されている)が到着したのがさらに一ヶ月後だ。これから実際に支払額が確定するまでどのくらいかかるか東京電力もわからないとしている。いくら延びても、東京電力は利息をつけるつもりはない。
    
(6)所有権の問題
 東京電力は賠償が100パーセント支払われても、所有権はそのまま本人に残るとしている。家を新たに別の土地に求めた人にとって、残された家の管理や取り壊しの責任が継続する。固定資産税も引き続きかかってくる可能性もある。
  
(7)地震と津波
 東京電力は事故の起きる前に地震や津波により家が損傷を受けた場合、その程度によって賠償金を減らすこととしている。全壊の場合は、土地は賠償されるが家の賠償金はゼロである。理屈からすればそうなのだろうが、家が壊れた上に、避難生活を強いられている人は他の人に比べ差がありすぎると思っているが、これはわずかの距離で避難対象とならなかった家の持ち主にも言えることだ。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter