日本エネルギー会議

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思わぬ落とし穴

 関西電力社員による大阪市内での故意の停電事故のニュースには驚いた。今回のような事例は、いくら施設を厳重に管理したとしても、内部の者の仕業では防ぎようがない。これからは原則二人で作業ということになる可能性がある。
 一方、原子力規制委員会は新たな規制基準にサイバーテロ対策を明記した。航空機の墜落以上に、世界中から原発の管理システムが狙われる可能性は高いので、この決定は当然だ。
 規制基準は物に関することがほとんどだが、物は働きが決まっており物理化法則化学法則に忠実だ。一番たちの悪いのが人間であり、ヒューマンエラーも含め、何を仕出かすかわからない。物も人間が作り、運転し、メンテナンスをするからその健全性は究極的には人間に依存している。
 二十年近く前、原発の建設現場にいた頃、現場が広く、しかも細かく壁で仕切られている建屋の構造で、何千人という人が出入りし、夜間作業もあることから、いたずらや妨害行為をどのように防ぐかに悩んだ経験がある。放射線管理区域が設定された後は、出入り口が限られるので、比較的管理がし易いが、それでも作業員に工事機材とともに爆発物を持ち込まれたり、制御系の配管や設備を破壊される可能性は否定出来ない。こうしたリスクを減らすためにも、当時から多層構造の請負体制を見直す必要があると考えたが、その実現はいまだに目処がついていない。
 日本の原発の場合、運転操作は電力会社の社員が行なっており、補助業務や日常のメンテナンスは関係会社社員や地元の協力会社社員で固めている。しかし建設や定期検査では、メーカー傘下の多層構造の請負体制を使うことによって、臨時的雇用の作業者を数多く入構させている。社員などについてはサボタージュや勝手な行動はしない前提で考えているが、少し甘いかもしれない。
 ロシアのバラコバ原発を訪問した際には、運転員を中心に社員の心理学の専門スタッフが常駐し、一室を確保して常時カウンセリングを行う体制をとっていた。ロシアではアルコール中毒の人も多いこと、原発の運転は緊張をする業務であることなどをその理由としていた。アメリカの原発では入退域のゲート近くに犬がいたので、尋ねたところ麻薬犬だということだった。アメリカでは中毒者が多く、その必要性を素直に認めているということだ。
 今回の関西電力の例は、電力会社の幹部を仰天させたはずだ。最近起きているさまざまな事件を考えると、今の世代の考えと行動は、以前とは明らかに違うことを理解し、対策を早めに打っておかなければ、思わぬ落とし穴に落ちかねない。

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