日本エネルギー会議

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海軍の図上演習

 多くのファンを持つ司馬遼太郎の歴史小説「坂の上の雲」。昨年はNHKの大型ドラマにもなり、若い世代にも明治の日本像が広く伝えられた。その中で、アメリカで学んで、後に日本海海戦の作戦を立てる秋山真之が所属する日本海軍が、海軍兵学校の講堂で盛んに図上演習をするシーンがあった。
そのシーンが印象に残っている理由は、演習に進行において、戦艦などが発射した砲弾がどの程度命中するかを、審判がサイコロで決めていたからだ。戦争はまさに最大の現実であり、図上演習といえども一番現実に近いやり方をしておかなければならない。サイコロの使用は運不運も含めてあり得ることと考えた上での訓練の工夫である。
 それを見ながら、以前の原発の事故訓練などを思い出すと、事故はしかるべき原因で起きて、それが徐々に拡大するが、時間の経過とともに対応が実施され、いつしか理由もはっきりしないままに事故が収束に向かっていた。
 長くてもスタートして数時間の後には、原子炉圧力や温度は平常値となり、放射線量も下がっているシナリオでやっていた。シナリオ逸脱は事故対策本部長である発電所長が、サービス精神からか、たまにアドリブ的なセリフを加えたり、再確認の指示を出したりする程度であった。
 福島第一原発の事故の反省から、事故訓練のあり方が見直されているが、事故当日の風向きが、サイコロで決められるようなことはしていないのではないか。実際の訓練では通信手段がトラブルで、一部の自治体にうまく一報が伝わらなかったこともあるようだ。そのような事例こそ活かして、次回の訓練ではサイコロを使って、通信が10回に1回は意図的に伝わらないような設定にするべきである。
 原子力規制委員会の委員長は、新たな基準を定めた際の記者会見で、基準が定められただけではだめで、審査に魂を入れることが大切だとコメントしたが、魂を入れるとは、図上演習でサイコロを使うようなことを言うのだと思いたい。

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