日本エネルギー会議

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ひとつの懸念

 世界中を飛び回っている安倍総理は、行く先々でトップセールスを繰り広げ、原子力協定の推進など原発輸出の地ならしを行なっている。この背景には、原発輸出を日本の産業復活の起爆剤のひとつと考えていることがある。原発技術大国である我が国へは、新興国、途上国などの期待が集まっており、安倍総理のセールス活動に対する反応も上々のようである。
 途上国が原発を運転するには、一定水準の工業力も必要だが、さらに人材や法体系、社会体制、国民の理解も大切である。原発や関連施設は、国内紛争の人質や国際的テロの標的となりやすい。治安や社会体制の安定がなによりも必要である。比較的安定していたトルコでさえ、最近は社会体制が揺れているのが気にかかる。
 今から60年前のこと、日本は急増するエネルギー需要に対し、準国産のエネルギー源として、原子力発電の導入をどの国より早く決定し、先進国であるイギリス、アメリカから実用化されたばかりの原発輸入を急いだ。
 そこで問題となったのが、フロントエンドにおけるウラン濃縮とバックエンドにおける使用済燃料の処理処分問題だ。日本の場合は、ウラン濃縮はアメリカが、使用済燃料はイギリス、フランスがビジネスとして引き受けてくれた。 その後、我が国は、濃縮、再処理ともに国産化を目指し、なかでも再処理は大変な外交努力で、核兵器を持たない国としては、世界で唯一、再処理工場を持つことをアメリカに認めさせた。
 その結果、日本原燃株式会社が青森県六ヶ所村において、1992年より遠心分離方式によるウラン濃縮工場を操業し、現在、新型遠心分離機への移行計画が進められている。再処理工場は1992年に同じく六カ所村に着工して以来、電力会社を中心に約2兆円を超える資金を投じ、なんとか完成に持ち込もうとしている。
 日本が原発を運転し始めてから60年が経過、今度は日本が原発を輸出する立場に立っている。フロントエンドについては、濃縮技術が核拡散につながり、また自前ではコスト的にも高すぎるので、各国が先進国と交渉して商業ベースの取引で核燃料を確保すると思われる。
 バックエンドについては、かつての日本のように各国の使用済燃料を日本が引き取って再処理するのは、六ヶ所村の日本原燃の設備容量から見て難しいし、プルトニウムがこれ以上増えることはアメリカなどが賛成しないだろう。
 各国が高速炉やMOX炉もないのに、技術的にも経済的にも困難を伴う再処理工場を建設しないだろうし、再処理しない方が核不拡散のためにも好ましい。
 当面、新興国・途上国は、多くの原発保有国がやっているように、国内に使用済燃料の形で保管することになる可能性が高い。どの国も発電実績に伴い、国内で貯蔵する使用済燃料が増加し、「むつ市」で建設している中間貯蔵施設のようなものを、次々と国内に建設して行くことになる。原発輸出は、いずれ先進国の多くが取り組んでいる中間貯蔵方式を新興国・途上国に普及させるに違いない。こうして世界各国に貯蔵され続ける使用済燃料の管理が、国際的にどのようにきちんと続けられるかが、ひとつの懸念である。どんな商品も売ればそれで終わりではない。特に原発については、使用済燃料や廃炉まで、売った方も責任を持って関与しつづける必要がある。

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