日本エネルギー会議

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日本の技術力

 日本の原発に関する技術力は高いと言われてきたが、大地震と大津波がきっかけとはいえ、先進国の日本で原発のメルトダウン事故が起き、その収束に手間取ったことは世界を驚かせた。そこで考えなくてはいけないのは、本当に日本の技術力が高いのかということだ。ここでは技術力と言っても個々の製品を作る力ではなく、原発のような科学技術の集大成である巨大な施設を運用する力と定義した方がよさそうだ。
 戦前、日本の軍隊は世界一強いと自負していたが、かつての栄光にすがりついて、不敗神話と個人の献身的な努力に期待するだけで、組織的な動きが出来ず、兵站が弱体で肝心な実力も発揮出来ずに無条件降伏となった。このことを実証的に書いたのが、有名な「失敗の本質」という本だ。
 人間関係や体制維持を優先し、直面する技術的課題に対応することなしに先延ばしを図る。疑問を持つことより決められたことを愚直にやることを尊ぶ。多層構造の組織の上層部があまりにも現場の実態を知らない。底辺がしっかりしているがために、上部は実力がない者でも務まる。ルール、契約、金銭などで物事がすべて管理出来ると考えている。問題提起を反抗とみなし押さえ込む。内容にかかわらず外部からとやかく言われるのを嫌がる。責任分散をしておく。縦割りが強すぎて事故情報などが共有出来ない。現場検分より証文に頼る。専門性を盾に勝手に範囲を限定し、つなぎの部分は誰かがやるはずと考える。契約がなくてもやってくれるはずと期待する。花の建設、涙の補修の風潮。古いことや変わらないことが信頼性につながるとの勝手な考え。悪い情報は上げない、解決策が見つからない問題は考えないことにする。論争の後はいつまでも根に持つ。見かけが大切、一事が万事の考え方をする。必要以上に安全率を取ることで金を無駄遣いし、責任が及ばないようにする。そのことがわかるが故に自信過剰になりがち。誰もが傷つかないようにするため、失敗を総括出来ない。企業間の人材の移動がなく他の世界を知らない。プロフェショナリズムが確立されていないなどなど。これだけで本が一冊書けそうだ。
 いろいろ挙げているうちに、これは世界各国共通の問題ではないかと思い始めたが、日本が特にその傾向が強いということになれば、それは何故かを考える必要がある。そうしなければ、日本の技術力の弱さの源泉がわからないからだ。日本が人に厳しい砂漠の国ではなく、緑豊かな自然環境に恵まれ、周囲を海で囲まれた国であったからなのか。あるいは長く平和が続く江戸時代を経て、外国からの侵略も経験せず、朱子学に傾倒した政治を信頼し、ノー天気な性格が染み付いたからなのか。心の安寧や美を追い求めるばかりにジャレット・ダイヤモンドが著書「文明の崩壊」でいっている「こだわりによる滅亡」につながっていくのか。それとも、国力を失い、凋落してみれば、こだわりを追求する愚かさに気づくものなのだろうか。

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