日本エネルギー会議

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研究施設の防災

 東海村のJ-PARCハドロン実験施設における放射性物質の漏えい事故が波紋を起こしている。茨城県と関係市町村は、県内の原子力施設に安全管理や通報連絡体制などについて報告を求めた。地元にとって最先端の研究施設があり、世界中から人が来ることは誇りであり、原発しかない立地地域からはあるべき姿として羨望の眼差しで見られていたが、こうした事故が起きると、そのイメージも大きく傷つく。
 ハドロン実験施設では、実験中に異常を知らせる警報が鳴ったにもかかわらず、「誤警報」と判断して加速器の運転を再開した、施設内の排風ファンを回し続け周辺環境を汚染させてしまった。問題の標的を入れた容器が開設当初から密閉されていなかったなど、福島第一原発の事故のような問題点の長期間放置もあった。いつもながらの情報連絡の遅れもあり、「もんじゅ」に続く事故で、日本原子力研究開発機構は、またしても評判を落としてしまったが、地元は住民の3分の1が、原子力関係者であり、批判は中にこもりがちである。
 JCOの臨界事故の時もそうだったように、原発以外の原子力施設の安全は特殊なもの、例外的な問題として見落とされてきたという反省がある。それぞれに特別な目的のための施設であり、原発とちがって地元企業が参入出来る範囲が少なく、地元雇用も少ない。日本原子力研究開発機構や日本原燃を除くと規模も小さく、知名度が低い中で、どのような事業が行われているか、外部の人たちにはほとんど知られていない。原発のようには世間の注目度が高くないため、メディアも反対派も研究施設や周辺企業に対しては、電力会社という巨大組織に立ち向かうような高揚感を維持出来ない。
 加速器のような研究を装置に依存する施設では、研究施設といっても装置の稼働が大きなウエイトを占める。本来、そこでは原発や製造工場のようなオペレーションのノウハウが重要になり、安全についても装置産業の運転や保守に係わる安全文化が必要とされるべきだ。だが、組織には元の研究開発文化があるので、なかなかオペレーション文化がなじまない。もんじゅのナトリウム漏えいが起きた時、電力会社から出向していた運転員は、同僚の動燃プロパーや上司が、現場を絶好の研究材料として見ており、事故収拾や運転再開に向けてすぐさま行動を起こさないことに驚いた。
 実験のための装置であることから、関係者はその性能に関心が向かいがちである。何が起きるか想定しづらいなかで、事故訓練もやりにくい。思いがけないことが起きることを前提として研究をしているが、その時のための防護策や事故の周辺影響拡大の防止について、あらゆる想定をすれば、装置は金が掛かり過ぎて作れないと考えがちだ。
 研究施設では一般的に周辺住民とのコミュニケーションは、原発ほどは行われていない。原発の場合と比べ、コミュニケーションの仕事は重視されないため、予算もスタッフも確保されにくい。自分たちの仕事の本命は研究成果を出すことであり、理解活動をすることではないと考えている。これは初期の原発でも見られたことで、その後、電力会社では、反対運動の盛り上がりや事故トラブルで見直されている。
 こうした施設に対する安全規制や安全管理体制に関しても見直しが必要だが、ここにも目に見えないハードルがあるようだ。国の研究機関の場合、文部科学省などが所管し、予算も国から出ている。機関の職員は、規制当局の職員と同じく公務員である。規制当局が監査に来た場合、同じ政府の役所だ、同じ公務員だという意識がどこかにある。これが原発であれば、職員は民間企業人であるから、規制当局の職員は「お上」だという意識がある。「もんじゅ」の点検漏れに関する一連の動きは、電力会社では考えにくいことだが、こうした意識の違いもあるように思う。

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