日本エネルギー会議

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民間新組織の設立

 報道によれば、経済産業省は原発の安全性を高めることを目的として、民間新組織の設立を検討する会合を開催した。電力会社やメーカーに安全対策の強化を促す狙いで、「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」という長い名称がついている。
 経済産業省はアメリカの原子力発電運転協会(INPO)や原子力エネルギー協会(NEI)を念頭に置いているようだが、これまでも日本では、原子力業界が自主的安全確保努力を行う場として、日本原子力産業協会(旧日本原子力産業会議を新たな目的のために改組)や日本原子力技術協会が同様の目的で活動してきた。また、技術協会は役割と指導力強化のため、最近、原子力安全推進協会に改組されている。
 外から見ると、同じような目的をもった組織がどのように役割分担をするのだろうか、従来どんな不都合があったのかとの疑問も起きる。初会合では、電力会社やメーカーの代表も参加し、「原発のリスクは多様だ。安全性の認識を広げないといけない」「業界全体で落としどころを探るのではなく、事業者が独立して安全に責任を果たすべきだ」「リスクに対する客観的な物差しの導入も必要」などの意見も出たと報じられている。
 このような自警団的な組織は、各社の内部事情やノウハウの秘密保持に足を引っ張られて、自主規制の内容に抜け道が作られたり、徹底した査察や情報開示が行われなかったりする恐れがあることが問題である。
 組織構成員の独立性も問題で、いずれも出向サラリーマンであって、いつかは母体に戻ることは、原子力安全・保安院で指摘されたことと同じことが言える。メンバーが、思考の優先順位として「住民の安全」「環境の保全」「業界の利益」「母体会社の利益」「自分の得失」を守れるような仕組みに出来るかが、この組織の成功のポイントとなるはずだ。
 1970年代、日本原子力産業会議は「原子力開発は一企業、一産業の利益を超える崇高なものであり、国民的立場から原子力開発を考える」を標榜した。これらの詳しい内容は「原産 半世紀のカレンダー(平和利用の理想像を求めて)」と題した出版物で見ることが出来る。
 自主的安全の成果を上げるには、まず、上記の思考の優先順位に固執する技術的にもトップクラスのメンバーを集めることだ。その組織が活動した結果、自社に不利なこともあえて受け入れるという覚悟が、それぞれの企業のトップになくてはならない。その度量があるかが電力会社やメーカーなどに問われている。
 また、参加企業がその組織の活動状況をこまめにチェックして、全力で当初の目的に向かって活動しているかを確認しなくてはいけない。似たような組織でも、アメリカが成功しているのはこのところがしっかりしているのではないかと思う。自らを律することの難しさは、毎日のように経験しているが、組織においてもそれは同じだ。

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