日本エネルギー会議

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漂う

 最近、福島県の避難者数が15万人を切った。避難区域の再編と除染の進捗が進んだことの表れであるが、一方、遠く県外に避難していた人々が福島に戻ってきたこともある。ただし、まだ県外に5万人も避難していると聞くと、事故の心理的影響が、とてつもないものであることがわかる。
 今回、定員2から1となった参議院選で、自民党の候補者、森まさ子氏は原発再稼働について自民党本部とねじれているのではないかと聞かれ、「規制委員会で審査した後に、地元自治体の意向を聞くことになっている。福島の場合、県民が賛成しないので再稼働はない」と答えていた。自分は福島第二原発の再稼働を阻止するとは言わずに、県民の力に期待するようなおかしな言い方だったが、結果は二位の民主党金子氏にダブルスコアで勝利した。
 投票率は過去二番目の低さであったが、「原発支持の自民党には入れたくないが、民主党など他の政党には復興や景気回復は期待出来そうもない。自民党に入れても、県内の原発は自分たちの手で廃炉に追い込む」と思った人が多かったのだろう。
 中通りの郡山市や浜通りのいわき市では、どの住宅メーカーも受注はしても住宅着工が半年待ちという盛況で、そのほとんどが避難家族であると言われている。その影響は私の避難している郡山市の隣りの須賀川市でも目にすることが出来る。現在、消費税がらみの建築ラッシュとはいえ、半径百メートルで4軒の新築工事が進行中だ。
 賠償金で家を造った家族は、引越しとともに住民票も移す。浜通りには、残してきた家もあるが、次第に行かなくなる。あと何年生きられるかはわからないが、あの第一原発は自分たちが生きている間には片付きそうもない。
 冠婚葬祭などつきあいは過去を引きずっている。友人、親戚、墓などは旧来のままで、新しく地域にはなかなか溶け込めないでいる。特に中年以上の世代にとっては、中途半端な状態で、心理的に落ち着かない状況がいつ果てるともなく続いていくようだ。
 参議院選と同時に行われた富岡町の町長選では、5期目を目指した現職が、新人に57票差で敗れた。町民全員が避難中の富岡町の有権者は1万人だからその接戦ぶりはすごい。ここにも過去を捨てきれない人と新たな生活に挑戦しようとする避難者の葛藤する気持ちが反映されている。

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