日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

ガソリンがすべて

 「馬をくれれば、国をやる」は、シェークスピアの「リチャード三世」の有名なセリフ。
馬と国では、釣り合わないが、誰でも似たような気持ちになる事があるはずだ。
福島第一原発の事故に関して、元東電副社長の豊田正敏氏も「今回の事故は全電源喪失が最大の原因であり、特に、直流電源としての非常用バッテリーが、津波の被水によって最初から働かなかった、当初は働いたが、容量不足により枯渇した。これを補充する予備のバッテリーも車のバッテリーまでもかき集めたが十分でなく、シビアアクシデント対応の1号機のIC、2号機以降のRCICやHPCIも十分、機能せず、燃料溶融に至ったと考えられる」として、「直流電源がすべて」と述べている。
 事故により避難を余儀なくされた私の場合、「馬」は車であり、ガソリンだった。東日本大震災では地震とともに停電したことで、情報通信が使えなくなった。さらに今後のことを考えて、マイカーのガソリンを満タンにすることが急務であったが、どこへ行ってもガソリンスタンドは開いていなかった。なぜなら、スタンドの地下タンクにはガソリンがあったが、それを組み上げるポンプが停電で動かなかったからだ。ガソリンは電気がなければ手に入らないのだ。また、水道も出なくなり、冷蔵庫の食料品もだめになった。原発だけでなく、この世は電気とガソリンがなければ直ぐに麻痺状態になることを実感したのが先の震災だった。
 幸い、店員が手動でポンプを回して、時間をかけて給油をしている奇特な地元のガソリンスタンドが一軒だけあって、3月11日の夕方には満タンに出来たが、果たして次の日の朝、マイカーによる避難指示が出た。あのスタンドの努力には、感謝してもしきれない。
 現在、防災計画が各地で見直されているが、停電時のガソリンの確保と供給はどのように具体化されているのだろうか。例え、停電しなくても、ガソリンスタンドにはあっという間に長蛇の列が出来て、町からガソリンが消えてしまうことは十分に予測出来る。公的機関の車でもガソリン確保のあてはあるのか。
 防災計画で敦賀市民の避難先は奈良県などと聞くと、「何千台というマイカーが、本当にそんな遠くまで行けるのか」と人ごとながら心配になる。
ついでに、万一冬に事故が起きて避難が始まると、灯油不足が深刻だ。3月とはいえ、まだ雪がちらつく中、寒いので有名な川内村の体育館で灯油ストーブが深夜の二時間だけしか焚いてもらず、毛布にくるまって震えて過ごしたことを思い出す。電気、ガソリン、灯油と「馬」はたくさん必要なのだ。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter