日本エネルギー会議

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社長の発言

 居酒屋に行くと誰でも「社長。今日は何にしましょうか。」とマスターから呼びかけられる。「俺は社長なんかじゃない。ただの平社員だ」などと慌てて否定せず、「大将、今日のお勧めは」と返せばよい。今日、JR北海道の社長もカネボウ化粧品の社長も大変だが、ある意味、身から出た錆びだ。これに対して東京電力の社長は、叩かれるために社長になったようなものだから、辛さの程度が違うはずだ。
 船橋洋一氏の「カウントダウン・メルトダウン」(文藝春秋)上巻に興味深い一節がある。第8章「運命の日」で東京電力が福島第一原発の現場から撤退かどうかというきわどい場面だ。
 清水はその日、東電2階のフロアを秘書課員のように忙しなく動いていた。政務の一人が菅にささやいた。
「東電の構図がようやくわかりました。すべて勝俣です。ここは、清水は、夢遊病者のようにウロウロしているだけです」
清水社長に代わった西澤社長はわずか一年で退任。代わった広瀬社長は記者会見でも、表情はほとんど変えずに、言うべきことはきちんと言う。相手が大臣でも知事でも、なんとかしますなどと迎合するような態度は取らない。少し物足りないといえば、「それは自分がちゃんとやります。出来なかったらその責任は私です」という迫力に欠ける点だ。広瀬社長の発言を聞いていると、事前に別のところで物事が決められていて、社長はそれを外部に発信する役割に徹しているようにも見える。
 外部有識者による「原子力改革監視委員会」の第四回の会合で、デール・クライン委員長から汚染水流出に関する情報開示に関して「不満だ」と言われ、バーバラ・ジャッジ副委員長からも「自分たちのやっていることがわかってないのでは」と痛烈に批判されたが、広瀬社長は「みなさんのアドバイス、サポートに応えていない。本当に申し訳ない」と陳謝しただけだ。普通だったら、顔が真っ赤になり、強い言葉を口にするだろう。歯がゆい感じも受けるが、失点は最小限である。
 これを見ると、とても客観的で、社長と東電が別物であるようにさえ感じられる。これで私の新社長に対する印象はさらに深められた。スマートでありしたたかさも持ち合わせている。少なくともワンマン社長ではない。どのようにして広瀬氏が西澤氏の後任に選ばれたかも興味があるところだ。
では、影の存在があるかといえば確証はない。影は一人とは限らず、原子力部門という組織であるかもしれないからだ。さらに、外部から会長を迎えていることも今までとは違う。広瀬氏は、「自分は東京電力という会社が好きだから、放っておけないと思い、お引き受けした」と、就任の際に述べている。東京電力のどんなところが好きなのかがわからないが、それを知れば、広瀬氏に関して、もう少し理解が深まるだろう。

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