日本エネルギー会議

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現場力低下の心配

福島第一原発の事故の際、東京電力社員が現場を撤退し、福島第二原発に避難するかどうか政府と東京電力の間で、厳しいやり取りがあったことが明らかになっている。いやしくも原子炉設置者である電力会社の社員であれば、撤退はそれこそ最後の手段であろう。だが、契約上の責任もない下請け企業の作業員が、ボランティアで残って対応を続けたことは、後にフクシマ50と賞賛されることとなった。

このことで、いくら東京電力の本社と現場の免震重要棟がテレビ会議で議論したところで、実際に現場で手足を動かす人がいなければ、何も出来ないことも解ったのである。世界的に見ても、ここまで多層構造の請負体制が原発のメンテナンスを支えている国はない。過酷事故の対応においても、東京電力の社員である運転員だけでは、どうにもならない。メルトダウンをかろうじて免れた福島第二原発の当時の所長も、下請け作業者の働きを絶賛している。

そこで気になるのが、こうした人材の確保だ。福島第一原発の事故以降、各地の原発は、過酷事故関連の改造工事や追加工事を除けば、ほとんど仕事がなくなり、地元が経済的に行き詰まると心配するほどである。運転員は電力会社の社員であり、運転経験が不足しがちなのは心配だが、少なくとも雇用不安はない。だが、下請け作業者は仕事が無くなれば、契約は打ち切られるのが常である。その場合は、他の原発に回ることが多かったが、今はどこの原発も仕事が少なくなっている。

下請け企業は、苦しいから火力発電所やパイプラインの仕事にまで手を出しているが、そこにも限界がある。他の業界に行く作業者を止める手立てはない。特に現在は、一時的に復興景気に沸く東北をはじめ、公共事業の持ち直しもある。台所の苦しい電力会社は、それを引き止めておくために仕事を出す余裕はもうない。現場の作業者は現場作業を通じてのみ学び育っていく。いわゆるOJTである。その機会が作れないということは、そのまま人の育成が出来なくなっていることである。まして、高齢化が進み、毎年確実にベテラン作業者が引退したり、この世を去ったりしている。

私は現役時代、人事で一年だけ採用ゼロをやったが、たった一年でも、後にその悪影響に悩んだ。3年近いブランクの後、気を引き締めてという掛声だけでは、どうにもならない。多層構造を解消し、関係会社中心のメンテナンス体制にもっていくとか、処遇や雇用条件の改善をするなど、高度な技量と高いモラルを持つ作業員確保に関する具体的な策を考え実行しなければ、安定した稼働も、万全なる事故対応体制も成し遂げることは出来ない。 

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