日本エネルギー会議

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近づけぬ悩み

8月23日に開かれた政府の汚染水処理対策委員会で、東京電力は汚染水がタンクから漏れたことに関して、「放射線量が高く、タンクの中に入れないので、漏水箇所はわからない」と説明した。報道はここまでであり、委員会の議論もそこでストップしたのだろう。

この記事を読んで、福島第一原発の事故が起きた二年前の3月のことが直ぐに頭に浮かんだ。亡くなった吉田所長の指揮の下で、格納容器内部の圧力を下げようと、必死にベント操作を試みる運転員が、現場の放射線量が高くて引き返さざるを得なかった。本来、莫大な電気エネルギーを供給してくれる原発が、一度事故になれば、対応しようとする人を寄せ付けない高い放射線という牙を剥いてくるのだ。

現場に近づくことが出来ないことは、事故対応において致命的な問題だ。緊急時の運転員は、フルフェイスマスクと重い空気ボンベを背負うだけでなく、滞在可能時間との闘いをしなくてならない。ロボット開発などが進められてきたが、まだまだ人の代わりをするには至っていない。

近づけないという点では、火災爆発や化学薬品の漏えいなども同じだが、原発の場合は放置しておけば、自然に収まるというものではない。最悪の事態を避けるためには、どうしても人が手を下す必要がある。また、事故収束に向けての活動や外部に影響する時間についても格段に長くなる。事実、福島第一原発の事故では、二年半も経つが、いまだ収束ということではなく、溶けた核燃料に冷却水を掛続けている。

これまでの過酷事故対応や原子力防災は、この近づけないという事故の特徴が、必ずしも適切に考慮されていなかった。運転中、あるいは定期検査中にも現場では「ここを通る際には、被ばくを避けるためになるべく速やかに通りすぎること」という指示が出される。それに従う場合は、かなりの緊張感と肉体的負荷がかかる。

これが過酷事故ともなれば、全体的に桁違いの高放射線の雰囲気あるいは高放射能汚染が存在することとなる。ベントや注水など大切な操作は遠隔手動で行えるようにしておくべきだろう。現場では応用動作が要求される。一足飛びにロボットに行くのではなく、将来的にも人が対応の中心であることは変わらないだろうが、その際、特攻はやるべきではない。従来も、原子炉圧力容器内の点検や炉内構造物の修理では、さまざまな装置や器具が開発され使われてきた。事故対応のためにも、生身の人間をいかにサポートし、被ばくする時間をどのように少なく出来るかを大いに工夫するべきだ。

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