日本エネルギー会議

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誰が汚染水を漏洩させたか

福島第一原発のタンクから高濃度の放射能汚染水が漏れた問題で、東京電力がタンクを巡視する際の点検記録を作っていなかったことが、原子力規制委員会による現地調査でわかった。東京電力の汚染水管理のずさんさが、大量の汚染水漏れにつながっていたとみて、規制委員会は点検と管理を強化するよう東電に指示した。また、規制委は、保安検査官が再三、東電にパトロールやタンク対策の問題点を指摘したのに、改善されなかったとの報道もある。

事実がこの報道の通りであるとすれば、いくつかの疑問が生ずる。まず、点検と管理を強化するよう指示したとあるが、それは対処療法に過ぎない。何故、東京電力がそのような手抜きとも思われる点検方法と管理体制をとっていたか、その原因に迫らねば再び問題が起きるだろう。さらに保安検査官の指摘に対して東京電力が動かなかったことは、「規制庁の言うことは必ずしも聞く必要がない」と考えていたことであり、規制当局に対する反抗であったと捉えるべきであり罰則ものである。まさか検査官がその指摘を記録していなかったのではないだろう。

規制委員会が単に点検と管理の強化を指示したとすれば、彼らは問題の本質がまったくわかっていないと言わざるを得ない。現場での事故トラブルの原因は、二つの側面を持つ。ひとつは汚染水管理の重要性に対する認識も含めた予知能力の不足であり、これは現場および管理部門の当事者能力の問題であり、これが改善されないようでは、当事者を辞めてもらうしかない。もうひとつは、管理部門が、現場に対して必要な予算と人と権限を与えていないことである。

私の現場経験からすれば、現場では保身のための過大な要求もある反面、ほとんどの場合、予算や人員や権限に関しては妥当な要求を管理部門に出している。これに対して管理部門は本社の意向も受けて、これを削減しようとする。その際に、内容を十分に吟味して切って良いものと、切ってはいけないものを的確に判断する必要がある。今回は、シートを張った貯蔵施設やタンクの仕様を見ても、管理部門が汚染水管理の重要性に対する認識に欠けていたと思われる。いったい一連の対応を誰が計画し、誰が承認したのか。記者会見で東京電力の広瀬社長は「安全文化がまだ浸透していないうんぬん」と述べたが、最も安全文化に問題があるのはお膝元の本社の上層部である。

930基ものタンクをわずか二人の社員に二、三時間で見回りをさせていたことは、どう考えても現場の実態に即してはいない。まさに形式主義に陥っていた。業者に委託していれば、点検記録などの提出を求めていたに違いないのに、社員がやったために点検記録も残していない。だが、原発の運転員の行動であれば、記録をしないなどということは考えられないことであり、記録は残っていたが、何か不都合なことが書かれていたのではとの疑いも消すことが出来ない。

美浜3号機の薄くなった配管が破れ、水蒸気を浴びた下請け作業員が亡くなった事故の後、原子炉メーカーの幹部が「我々に管理を任せておけば、事故は起こさないで済んだ。我々の仕事を取り上げ、電力の子会社にやらせたことがまずかったのだ」と言ったことが、今でも記憶にある。メーカーは電力会社や関係会社の実力や社内体制をそのように見透かしているという一例だ。

かつての電力会社の一連の不祥事や、福島第一原発の事故における対応のまずさの原因である管理部門の問題体質や現場や下請けへの矛盾の押し付けは、いまだに治っていないようだ。規制委員会や地元自治体、そしてメディアも、東京電力の釈明をそのまま受け入れたり、報じたりするのではなく、そうなった原因はどこにあるかをしっかり突いて行かねばならない。福島第一原発の現場で作業している人や避難している人は、そこにメスが入らないことにイライラしながら事態を見ている。

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