日本エネルギー会議

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地震の影響

日本原子力学会は先頃、福島第一原発の事故に関する調査委員会の最終報告書案の概要を公表した。政府、国会、民間、東電と四つの事故調査委員会の報告書では、地震の影響が事故発生につながったかどうかで意見が別れたが、学会の報告では事故原因について「津波の浸水」が主因として、地震での損傷は否定した。そうした理由として、「原子炉は緊急停止し、健全性が保たれた」としている。地震の影響ついては、これからも論争が続くと思われ、廃炉作業が進捗するとともに新たな事実が出てくることも期待される。

だが、事故発生原因についてはともかく、事故による被害や環境影響に関しては地震の影響が大きかったのであり、「原発は地震に耐えた」と勘違いしてはならないのではないか。燃料に含まれる大量の放射性質は、原発の5重の壁で外に出ないようになっていると地元住民に何十年と説明されてきたが、今や、崩壊熱による高温で、ペレット、燃料被覆管、圧力容器が突き破られ、高い内圧によって一部が壊れた格納容器を(内圧ではなく地震でという人もいる)突き抜けて原子炉建屋内に出て、そこから原子炉建屋の分厚いコンクリート壁や底部を抜けて建屋外の地下に流出している。

さまざまな報道内容を整理すると、(1)溶けた燃料を冷却するために注いだ水が格納容器や原子炉建屋の壁を突き破って外部に出ている。(2)地下水が山側から海に出る途中で原子炉建屋に入り込み、そこで汚染して汚染水となり、これまた建屋外に流出している。あるいは、山側から流れ込んだ地下水が、原子炉建屋周辺に達し、原発から出た汚染水と地下水脈で混ざり汚染している。(3)原子炉建屋などから回収した汚染水を貯蔵しているタンクから高濃度の汚染水が漏洩して地下に入り、地下水脈に達して地下水とともに海に流出している。(4)原発の海側に造られたトレンチと呼ばれるコンクリートの溝に原子炉から出た高濃度の汚染水が溜まり、それが溝のひび割れなどから海に流出している。これらが「海に流出する汚染水」として騒がれているものの内容だ。

いずれにせよ、汚染の供給源は建屋内の溶けた燃料であり、注入した水や地下水は建屋外部から内部に流れ込んで汚染され、再び外部に流出しているということ。それでは建屋の壁、特に地下階の壁には大量の水を通すルートがあると考えざるを得ない。それが、①壁そのもの亀裂や建設時に壁の外に貼られたライニングに出来た亀裂なのか、②壁を貫通している各種の水配管や電線管の貫通部の損傷なのか、③壁貫通部付近で破断した水配管や電線管からなのか、判っていない。そしてその原因はおそらく地震なのであろう。

これが東日本大震災前からそうなっていたのか、地震で壊れたのか、小さな亀裂が地震によって拡大してしまったのかは今のところ不明だ。今後、漏洩箇所を特定し、ルートを確定することも大きな困難を伴うだろう。

そこで「最後の砦とも言うべき原子炉建屋が損傷したのであれば、耐震設計などが不十分だったのか」との素直な疑問が出てくる。続いて「原発の再稼働にあたってはどう考えるのか。万一またメルトダウンが起きたら、福島第一原発と同じように建屋から地下に放射性物質が漏れるのではだめだ」という考え方も出て来て当然だ。

政府事故調の畑村委員長の所感「あり得ることは起こる。あり得ないと思うことも起こる」「可能な限りの想定と十分な準備をする」「危険の存在を認め、危険に正対して議論できる文化を作る」を適用すれば、原子炉建屋などの全体の水密性確保や貫通部の配管損傷防止は原発の設計上、国や電力会社に重い課題を突きつけることになる。

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