日本エネルギー会議

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何故、事故は福島で起きたのか

福島第一原発の事故原因を探る動きは、今も続いている。これからも何十年と続くのだろう。だが、「日本に50基以上原発があったのに、何故、事故は福島第一原発で起きたのだろうか」という質問をする人はほとんどいない。

弱った身体が病魔に襲われるように、シマウマの一番足の遅い子供がライオンに食べられてしまうように、悲劇は最も抵抗力が弱いところで発生する。原発の設備でも、放射性物質は熱に弱い容器のパッキン部分が溶けて、そこから漏れ出してしまった。

福島第一原発のどこが弱かったのか。どうして大事故になりそうになったときの抵抗力が弱かったのかを考えることは無駄ではなかろう。

(1)福島第一原発が大津波の可能性が高い太平洋岸に立地していた。
(2)立地の海面からの高さが低く、十分に高い防潮堤もなかった。 
(3)古い設計でタービン地下に電源室があるなど浸水に弱い構造であった。 
(4)サイト内に多数基があり影響し合い、対応に手がまわらなかった。 
(5)BWR型であり、PWRのように過酷事故時の冷却能力が低かった。
(6)送電鉄塔が地震に弱く、複数号機間をつなぐ電線が不足していた。
(7)サイト内に多数の使用済燃料が集中して存在していた。 
(8)プルサーマルの実施など課題が多く、津波対策などに関心が薄かった。 
(9)社内の事故訓練や体制が不十分、地域の防災訓練も現実的でなかった。
など。

「何故、過酷事故が福島第一原発で起きたのか」と考えることによって、東京電力だけではなく、周囲の関係者が何を見落としてきたのかを知る手がかりが得られるはずだ。一方、福島第一原発の強みを考えることも出来る。例えば、広くて平坦な敷地、多勢の社員と常駐下請け作業員、現場と本社との距離の近さ、重要免震棟の存在、福島第二原発の存在、原発周辺の人口密度の低さ、避難のための道路の存在などである。

各原発の強みと弱みはこうした比較をすれば一目瞭然で、トップランナーを目指して努力することこそが、より安全な運営に欠かせない。また、原子力発電運転協会(INPO)への参加をしていた電力会社は国外の原発との比較によることも十分に出来たはずだったが、「スイスの原発ではベントが遠隔で手動操作出来るようになっている」など海外の改善活動の情報は、福島第一原発の事故の後で取り上げられ役立たなかった。

比較こそが安全のために必要であり、比較を拒否することは独善的な運営に陥る非常に危険な行為だということがわかる。

従来、各電力会社は横並びを重要視するとともに、このような比較をすることを嫌がった。その理由は台所事情もあったが、一番は地元や反対派がその原発の弱みを知ることで電力会社にいろいろ言ってくる恐れがあったからだ。比較を避けるのに手を貸したのは、原子力安全委員会や原子力安全・保安院であり、メディアもこのことには一部を除き関心が薄かった。 

電力会社を横通しする電事連や原産協会などの関係団体が、この比較を行うのに相応しい存在と思われたが、彼らも電力会社が嫌がることは行い難かった。
敢えて言えば、関係者は「より安全な原発を目指す」より「地元などに波風を立てない、より穏当な運営」を優先させたのだ。私自身も、ほんの僅かな国内外の運営事例を紹介したりはしたが、この点については反省しきりである。 

今後、原発の設備だけでなく、各県の防災体制などについても国の支援調整が入るようであるが、被災者の立場からは「低位横並び」にならぬようにしてもらわねばならないと思う。

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