日本エネルギー会議

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1ミリの呪縛を解くには

9月20日付けの福島民報が、「ベクレルの嘆き 放射線との戦い」シリーズ報道で、産総研が行った5兆円とした除染費用の試算を紹介する中で、「人々が毎時0・23マイクロシーベルトで年間積算1ミリシーベルト」とすり込まれているが、実測値に照らせば毎時0・5マイクロシーベルトか0・6マイクロシーベルトでも年間1ミリシーベルト程度である。-略- また、それが事実であれば、国が除染の目標にしている年間1ミリシーベルトはおろか、住民避難の目安となった20ミリシーベルトさえ大きく揺らぎ、政策を根底から見直さざるを得なくなる。遅々として進まない避難区域の除染の在り方も変わってくる可能性を秘めている」と指摘している。

判断基準を実測値に切り替えれば、除染費用の低減も住民の帰還願望も叶うかもしれない。産総研の中西フェローは、「0・6は、一日のうち屋外に8時間、屋内(木造家屋は放射線遮蔽率40%)に16時間いると仮定した値。だが、実測値に照らすと、推測値の換算係数は0・3以下が現実的だ」としている。中西フェローは、これまでも国の関係者に「国は恐怖をあおっている」と換算係数を0・3前後に再設定するよう求めたが、受け入れてもらえなかったという。

私の富岡町の自宅は帰還困難区域だが、月一回の一時立ち入りの際には、線量計による測定を義務付けられている。それによれば、ほとんど庭の草刈りなどで屋外にいる私に対して、ほとんどを家の中の片付けで過ごす妻の被ばく線量は私の被ばく線量の4割~5割である。今までの一時立ち入り者の測定結果は、環境省がほとんど記録しているはずだが、こうした実測値をもっと活用するとともに、一時立ち入りの際の行動についても申告してもらうようにすべきだ。

国の関係者は、いままでの基準が今や正しくないことを認めることで、権威を失いたくない。反原子力の勢力と対峙するのを面倒と思う。そのために国の関係者らは、国費を浪費し、避難住民がいつまでも帰還出来なくても、まったく平気なのだろう。国会で、このことを質す政治家も現れそうもない。

年間1ミリの呪縛を解くには、放射線の専門家たちが、区域指定解除となった自治体の首長らを巻き込んで、帰還した住民の協力を得て測定の実績を積み上げ、推定値に対して実測値が半分程度である結果を、メディアや国にアピールしていくことだ。その際に、不利なデータもカットしないで公表する必要があるのは言うまでもない。

こうして基準見直しの環境を整えてあげなくては、国の役人や政治家の思い腰を上げさせることが出来ないのは本当に悔しいことだが、誰かが立ち上がって実測をしなければ、損をし続けるのは納税者と避難者だ。

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