日本エネルギー会議

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現場的発想の汚染水対策

福島第一原発の事故によってもたらされた汚染水の発生と流出を、どのように対処すればよいかが、国レベルの課題として認識され始めた。毎日のように起きるタンクなどからの漏洩で、東京電力の管理能力が問われ、このままではせっかく申請した同社の柏崎刈羽原発の再稼働にも影響が心配される。「東京電力は財政が苦しく汚染水対策に十分な予算を付けることができず、中途半端な対策しか出来ないのではないか」「東京電力には現場をしっかり管理できる人材がいないのではないか」などの意見があるが、私は汚染水漏洩に関して、関係者が現場的発想に乏しいのではないかと考える。漏洩する可能性のあるところからは、いずれ必ず漏洩すると考えるべきで、甘く考えてはならない。そう考えていて防げなかったのが、今回の福島第一原発の事故だからだ。

今回の事象を見ていると、野丁場であること、仮設という考えが強いことも影響しているのではないかと思われる。これが運転中の原発の建屋内であれば、もっと緻密な漏洩防止対策が取られていたはずだ。タンクの周りに築いた堰にしても、屋外だから必ず雨が降る。高濃度の汚染水漏洩のための堰であれば、カバーをつけて雨が入らないようにするべきだろう。そうしないで、逆に堰の一部を開放していたなど堰の意味がなく、まったく現場的発想に欠けている。

漏洩する可能性は汚染水を溜める容器や堰、あるいは汚染水が通過する配管、ホース、継手、ダクト、ポンプ、バルブ、計測器、さらには漏洩した場合その場所を囲んでいる建屋の壁、床、ピット、シートなど広範囲に考える必要がある。

タンクひとつとってみても、ボルトの緩みだけではない。過去に原発構内のタンクの底部から漏洩したり、堰を超えて漏洩したりした例がある。溶接線やコンクリートは細かい割れが生じるのが常だ。配管にしてもヒビが入っていたり、配管そのものが錆びたり薄くなって破れたり、中の液体で腐食が進んだりといった例に事欠かない。地震で揺すぶられて破断することもある。

タンクや配管などハードとは別に、運転操作ミスによる漏洩事例も多々ある。廃液をタンクに移送するためにポンプを回していながら、停止するのを運転員が忘れて、タンクをオーバーフローさせ、溢れた汚染水が堰を乗り越えてドレンピットに大量に流れ込んだこともある。この事例では、一部の汚染水が床のコンクリートのひび割れから土中に入り、それが海まで達して海藻から放射性物質が検出されるまで漏洩したことが隠蔽された。反対に、極めて短時間で発見された例もあり、雑巾で拭き取ることが出来た例もある。

我が国で最初の原発が稼働してから数十年が経つが、いままで数え切れないほどの汚染水漏洩があった。隠蔽されたもの以外はすべて事故トラブルとして、原子力安全基盤機構が作成する原子力施設運転管理年報などに詳しく記録されている。こうした資料を集めれば、漏洩しそうな箇所、起こりうる漏洩原因を容易に想像することができ、実効性のある対策も打てるはずだ。

原子力規制委員会も東京電力も過去に学び、現場的な発想で対応を考えなければ、いつまでも漏洩は終わらないだろう。

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