日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

これからの説明

原発で何かあった時には「止める、冷やす、閉じ込める」という文言は、パンフレットにも書いてあったし、今まで原発を訪れる見学者に対する説明で使われ続けてきた。万一、原発が故障したとき、万一、原発が大地震に襲われたときには、原子炉に制御棒が入ってただちに核分裂反応を停止し、崩壊熱は冷却水で冷やされ、原子炉圧力容器や原子炉格納容器、さらには建屋で外部への放射能の漏洩が防がれる。だから原発は安全であると見学者に説明するのが常であった。ペレット、燃料棒も加えて「5重の壁」という表現もよく使われた。

福島第一原発の事故の後も、基本的にはこのとおりであるが、それで大丈夫と主張するにはいろいろな前提条件があることが、一般の人たちにもわかってきた。弁やポンプは手動ではなくモーターで駆動するものが多いので電源がなくなれば動かない。制御室も電源を失えば原発の状況把握も困難になる。緊急用の電源が得られても、それをモーターなど機器につなぐのは大変だ。

電源なしで除熱出来る装置は限られている。格納容器内の圧力が高くなれば、爆発を防ぐため圧力を抜かねばならない。そのため、あえて中の蒸気を外部に放出する。核分裂反応が止まっても、炉内の水がなくなり崩壊熱で燃料が溶ければ水素が発生して爆発する可能性がある。放射線が強ければ現場に近づけず、手も足も出なくなる。

「止める、冷やす、閉じ込める」と言っても、まったくのフェイルセイフではない。そこには運転員の適切な判断と行動と重要機器の健全性が伴うことが条件だ。いままでの説明は、何もしなくても自動的にそうなるというニュアンスの説明が多かったように思うし、見学者がそのように思うことを説明者はあえて咎めなかった。過酷事故は起きないようになっているという説明が重点となっていて、万一起きた時にどの程度の放射能が環境に出て、それがどの程度の身体に影響があるのかという説明までは行かないようにしていた。 

新聞やテレビのコマーシャルでは、虫眼鏡でしか見えない細かな文字で、「これはイメージです」とか「人によって効果が異なります」などと書いてあることがあるが、そのようなことさえ行われていなかった。これまで電力会社は、壮麗なPR館、驚くような精巧な模型、案内嬢の美しいコスチューム、高級紙質のアートなパンフレットに力が入っていて、説明内容の検討がおろそかになっていた。

これから、全国の原発で再稼働に向けての説明、あるいは稼働してからの見学者への説明が行われるはずだが、その内容はどのようになるのだろうか。

少なくとも福島第一原発の事故をなぞって、どのようにして過酷事故が起きる可能性があり、その対策としてどのように備えがされているかの説明がなされる必要がある。規制委員会が新基準で問題にした点についての説明も必要で、安全性の説明は地層の説明から始まるのかもしれない。事故があった場合の住民への通報や避難についても触れねばなるまい。放射線の人体や環境に対する影響についても、福島に例をとった具体的なものでなくてはならない。

また、原発の必要性の根拠となる温暖化やエネルギー安全保障問題も、原発なしでは克服が難しいことについて説得力のある説明が必要だ。さらに、小泉純一郎氏が問題にしている高レベル放射性廃棄物の処理処分の見通しについても説明が求められるだろう。これからの原発の広報活動では、やり方ではなく、説明の中身や論理の組立について見直しが求められている。国や電力会社側の準備は出来ているのだろうか。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter