日本エネルギー会議

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都知事選の争点から見えてくるもの

都知事選が告示され、立候補の届出がスタートした。今回、各候補者からは7年後の東京五輪準備、都民の少子化高齢化対策、大地震に対する防災などの公約が掲げられているが、脱原発を争点化しようとする細川候補が現れたことが、いままでにない都知事選という印象を与えている。はたして、エネルギー・原発などが自治体の選挙の争点として適切か、これらは国の問題ではないかと考えるのが一般的、常識的であろう。

これに対して細川候補は、東京は人口もエネルギー消費も全国の1割を占めており、東京から国政を革新していくのだという言い方をしている。小泉元総理と連携した細川候補の懸命な訴えにもかかわらず、原発の是非が唯一最大の争点とはなりそうもない。これに気づいてか、今週から細川候補の演説の内容にも変化が見られる。

原発と東京都、あるいはエネルギー供給と東京都を争点とするのであれば、国のエネルギー政策と地方自治体の役割、あるいは全国各地が生産と消費の関係でどのような相互関係になるべきかのビジョンが取り上げられなくては、話にならない。

では、電力供給はいままでのように国が計画し、電力会社が地域独占で計画に応じた開発をするやり方が今後とも続くかと言えば、必ずしもそうではないだろう。従来、新潟県とともに東京への最大の電力供給元であった福島県では、県議会をはじめ各市町村議会で福島第一原発の事故後、脱原発決議が行われ、再生可能エネルギーの拡大、蓄電池などの産業を興すと決めている。

福島県だけではなく、事故後の3年間で、全国自治体の3割にあたる455の県や市町村議会が、原発に頼らず電力供給する「脱原発」を求める意見書を可決していると報じられている。原発の立地県に隣り合う府県で「脱原発」の意見書が多いのが特徴で、国の電力供給計画に対して自治体の意見を述べることが一種の流行となっている。これは原発の再稼働、新規建設に大きな障害となりそうだ。

脱原発のスローガンだけでなく、具体的に再生エネルギーによるエネルギーの地産地消を目指している自治体もある。書店に行くとバイオマスによる地域おこしの本である「里山資本主義」(藻谷浩介著)が平台に並べられているのも、その機運が全国的なものであることの証でもある。

地方では消費量も少なく、エネルギーの地産地消も可能だが、東京、大阪などの大都会ではこれは無理な話だと従来から考えられてきた。また、ドイツなど欧州の脱原発については、陸続きの送電網があるから可能なのであり、日本のような島国ではいざというときに電力を融通してもらえないので、参考にならないと言われてきた。

だが、日本全体をEUと考え、各県をEU各国と考えれば、9電力体制のもと、日本の送電網が弱体であることが問題であり、東西のサイクルの違いもネックとなっているのではないか。日本列島は南北に長く、東西もある程度の時差がある。周波数変換施設の増強や、超伝導ケーブルによるロスのない送電が実用化すれば、各社間の電力融通は本物になる。スマートハウス、スマートシティ構想は県単位や地方単位のスマートコミュニティを経て、最終的には日本全体がスマートステートになるべきだ。

既に東京都は都の施設に関して、東京電力以外の新電力からも電力を購入している。首都圏には鉄鋼メーカーなどの火力発電所があるが、それらの発電コストは概ね東京電力の発電コストを下回っている。東京都はメキシコや韓国といった国と同程度のGNPがあり、都内や周辺の県に都が所有し運営する電源を所有することも可能な経済力を持っている。水道は各自治体が供給の主体となっているように、電力についても将来、自治体が電源を確保し供給元にならないとも限らない。

福島県の協力のもと、浜通りの旧避難区域に新鋭火力、風力、バイオマス、メガソーラーなどの電源を現地企業に建設させて、福島原発用の送電線を使って、東京の電力を確保することも考えられる。都内の家庭や企業へのソーラーパネルや蓄電池に対する補助金を大幅に増額することで、普及を加速させることも出来る。

今後人口減少により電力消費の落ち込みが予想される東北電力、中部電力をはじめ商社やメーカーなども、大消費地である東京電力管内に電力を販売しようと虎視眈々と狙っている。脱原発あるいは縮原発を公約とする候補が当選した場合、東京都はこうした企業と渉りあって、電力料金をあまり上げずに都内の消費電力に占める原発比率を低下させていく可能性もある。

こうして東京都などの自治体がイニシアティブを取って、消費電力に占める原発比率を低下させていけば、それは同時に温暖化対策などにも自治体の責任が出てくることになる。東京都は原発比率を下げるだけで、温暖化対策や国際収支の赤字については、国の責任だと逃げる訳にはいかないだろう。東京都知事は、原発の危険性から都民を守るだけでなく、原発をなくすことの危険性からも都民を守ることを約束してもらわねばならない。

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