日本エネルギー会議

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官僚主義

近代における巨大な組織は、いずれも官僚制によって管理されている。これはドイツの社会学者マックス・ウェーバーが論じたように、官僚制が大組織を管理するに当たってほかの管理形態に比べて合理性において優れているからだ。

これに対して、アメリカの社会学者ロバート・マートンは、現実の官僚制は良い面と悪い面を持っており、しばしば手段が目的となって非合理非能率なことになることがあると主張した。彼が言う官僚主義には、
(1)
官僚制は各自の行動の信頼性と規則の遵守を要求するが,規則の遵守にこだわりすぎれば、その組織目的とは関係のない形式主義や規則万能の考え方、繁文縟礼等をもたらす。
(2)
訓練された専門技能はしばしば柔軟性に欠け,仕事上の変更に対し臨機応の処置を取りにくくし、前例主義や画一的傾向となる。
(3)
勤続年数による昇進や安定した地位は、競争よりも利害の共通性の感覚を生み,集団の保全を優先させて秘密主義となり、巧妙な知恵、膨大な労力や予算を費やして責任回避や自己保身をするようになる。
(4)
地位による身分的特権は,しだいに神聖化され,道徳的に正当だとする態度を伴った特権に変わりやすく、権威主義的傾向となり、批判を封じるようになる。

日本が軍国主義に入る時代に、これらの問題を肌で感じて、「官僚は人間のクズである」と放言し、最も役人を嫌った電力の鬼・松永安左ヱ門がつくった電力会社が数十年を経て、日本を代表する官僚的な組織になったのは皮肉である。そのくらい官僚制に対するマートンの指摘は的確であるということか。

日本の原子力開発において、関係官庁、研究機関、電力会社、原子力メーカー、それに立地自治体も官僚制を採用している大組織だ。原子力開発をめぐるさまざまな混乱と福島第一原発の事故。それらの原因や背景を探ると、官僚制の問題点ともいえる官僚主義に行き着く場合が多い。原子力界に身をおいた人であれば、上記の(1)~(4)を読んでいくつかの具体的事例に思い当たるはずだ。それらを集めて分析すれば、今回の事故原因のより深い考察が可能となる。

先週、原子力規制庁はJNESを吸収したことで、1000人体制の堂々たる大組織となった。この組織も官僚制によらなければ管理不能であることは確かだが、同時にマートンの指摘した負の側面もまちがいなく付いてくることを幹部たちは自覚しなくてはならない。

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