日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

避難の現実

原発事故の時にモニタリングをしたり、要支援者を運んだりする車両が福島第一原発の事故から3年経った今月末に、ようやく全国的に「緊急車両」と認められることになった。これを報じた朝日の記事には、警察出身の池田克彦・原子力規制庁長官は「率直に言って、今まで緊急自動車になっていなかったのがおかしかった」と述べたとある。なぜ、3年もかかったのか、記者には引き続き経緯とその理由を追いかけて欲しい。

原発事故によるいきなりの避難を経験した私は、原発のある広くて人口の比較的少ないところでは、なんといってもマイカーによる避難に頼らざるを得ないと思っている。都市部では道路が渋滞することを見越して、マイカー禁止とする考えもあるようだが、マイカー以外にどのようにてすみやかに避難する手段があるというのだろうか。

当時、確かに道路が渋滞してマイカーで20キロ離れた隣の村の役場まで5時間近くかかったが、それでもなんとかたどり着けた。それに原発に向かう反対車線はまったく車が来なかったので、緊急車両はサイレンを鳴らして追い越して行くことが可能だった。数珠つなぎになりながらも、すこしづつでも車が走れたのは、住民たちへの情報の伝わり方の違いから、分散出発でマイカーでの避難が行われたからだと思う。さらに列を乱さなかったのは、原発で何が起きているか、どの程度危険が迫っているのか、「避難せよ」との指示以外まったく情報がなかったからだった。

後で分かったことだが、避難者の何分の一かは、消防、警察、自衛隊、それに東電や関係企業に勤める親戚、知人から「1F」が危ないと聞いて、前夜から避難を始めていた。一般の人たちが翌朝9時過ぎてから放送で知らせをうけて避難した頃には、住民の半数は既に町を出ていて車の台数が少なかったのだ。

最初の再稼働が期待されている川内原発のある薩摩川内市で、このほど市が独自に原発避難車両シールを作成し配布したという。配布したのは原発から5キロ圏内の地区。ここだけで車は4000台ある。避難時には運転席の日よけに外向けに貼り付けるというが、果たして実効性はどうなのか。

これを見た5キロ圏外の住民はどんな反応をするだろうか。自分たちに避難指示が出るまで家でおとなしく待機するだろうか。シールの目的は車で避難する住民を誘導しやすくするためというが、逆効果ではないか。シール付きの車は通すが、なければ通さないなどとすれば、猛烈な反発を食うだろう。抜け道は限りなくあり、バリケードによって規制するには相当の時間と人員が必要だ。もしもやるのであれば、原発からの主要道路には開閉出来る封鎖用ゲートをあらかじめ設置しておき、避難指示が出たら直ぐに複数の警察官を配置しなくてはならない。かつて福井県では自然災害時のための封鎖ゲートが「あれは原発事故のときのためにあるのだ」という噂が流れたことがある。それが噂でなくなるというわけだ。

一番困るのは、避難した先で、シールが貼ってある車が汚染しているのではないかと思われること。いわき市内では避難車両や避難者が近づくことは市民から露骨に嫌がられた。シールは「原発近くから避難してきた車」ではなく、食品のように、「この車は汚染検査済み」という意味の方が有効だと思うがどうだろう。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter