日本エネルギー会議

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廃炉とモチベーション

福島第一原発の廃炉に関する人材確保が課題となっているが、現在現場で働いてる人も含め、そのモチベーションをどうするかを考える必要がある。
モチベーションはいろいろあるが、まずは賃金や雇用の安定あるいは労働環境などで十分なことをしていることが大切。この点、廃炉、しかも事故を起こした原発の廃炉は高い放射線の下での作業となるため、処遇に問題がないかをしっかり監視するべきだ。今のままで放っておけば、人は除染作業に流れていく。

兵隊には義勇兵、傭兵、徴兵があり、最強は義勇兵と言われる。金のためではなく、義を感じて戦う兵士は一番勇猛であり、悪条件にも耐える。傭兵は金が目当てであり、徴兵はやむを得ず戦うからだ。では、福島第一原発廃炉の義とは何か。また、従事する者が義と感じられることとはどんなことなのか。

原発の場合、建設は完成が目的で一番わかりやすい。その際に死傷ゼロとか、予算内、工期を守る、設計性能が出るなどの目標もつけやすい。出来上がった原発の運転を担当している人は「自分たちは駅伝ランナー。次の世代に引き渡すまでしっかり運転して電気を出す」とこれまた明瞭な目的がある。廃炉は30年から40年もかかるとされていて、世代を超える一番長い仕事になる。

廃炉は付帯的な目標はあるものの、目的は原発から燃料を取り出し、設備を壊して廃棄物として処分することでしかない。廃炉は設計、製作、建設、運転、廃炉の最後の部分であり、原発の生涯の幕引きで、これがなければ原発の存在というものが完結しない。戦の退却にせよ、登山の場合の下山にせよ、幕引きは精神的に苦しいものだ。

福島第一原発では事故の対応のため、廃炉のために協力企業の従業員が、避難先から戻ってきた。その人たちは「自分がいままで世話になった原発を放っておくわけにはいかない。自分たちにも責任があると思い、マイプラント意識で仕事をしている」と言っている。東京電力の社員もその気持ちであろう。後から廃炉に参加する後輩たちにも、マイプラント意識を持って貰えるようないい雰囲気の職場であって欲しい。知り合いの避難者の一人が、「自分はもう高齢だから、もらった賠償金で子供や孫たちに家を建てて残してやるのが自分の願いだ」と言っていたが、福島の大人たちは「廃炉をきちんとやって、子供や孫に負の遺産を残さないようにしたい」と思っている。廃炉に携わる人々にはそれを理解して欲しい。

自分たちの仕事が、世界中から注目され、皆からすごいと言ってもらえることが生きがいやりがいにつながる。スリーマイル島原発もチェルノブイリ原発も、事故調査や廃炉計画には各国技術者が参加し、日本からも技術者が派遣された。今度は世界から福島に来てもらう必要がある。原発の 建屋内が高線量のため、ロボットなどの活用が必須であるが、必要な開発を行なって、これから始まる世界中のたくさんの原発の廃炉の先頭に立つということも、大いにモチベーションとなる。その意味では、廃炉を新たな管理と技術の挑戦として、大いに全国の人たちにアッピールすべきだ。

昔、市民対象の説明会で、高レベル放射性廃棄物の管理はどんなものかと質問されて、「墓守りのようなもの」と答えたら、質問者から「イメージが暗すぎる」と叱られた経験がある。廃炉に携わる人々にモチベーションを持ってもらうためにも、我々は廃炉を新たな原子力プロジェクトXとして注目し続ける必要がある。

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