日本エネルギー会議

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究極の対策

建設現場で安全管理の仕事をしていた若い頃、パトロールしていると指摘事項がどんどん出てくる。さっきまで安全帯をせずに高所作業をやっていた人たちは、安全パトロールが来たとわかると、さっと安全帯のフックを足場に掛ける。そこでこちらは気づかれないように近づくという鬼ごっこをやったものだ。しまいに私を見つけると皆さんは手を止め、足場から降りてきて休憩に入ってしまうようになる。「監督さん、何もやらないのが一番安全だよね」とからかわれたことを思い出す。

原発も再稼働せずに停止したままが一番安全と言いたいが、原発は動いてこそ価値があるからそうはいかない。運転中、何かあったら直ちに「止める」「冷やす」「閉じ込める」なのだが、これがなかなか複雑な仕掛けになっている。

ベテランの運転責任者がスクラムしたら、まずタバコを1本吸うくらいの余裕を持つことが大切と言っていた。システムが自動的に安全装置を動かし始めるので、余計な操作はせずに落ち着いて様子を見るということらしい。

ただ、システムは往々にしてうまく動かない。それに自然災害などは想定外の規模となる可能性がある。ディーゼルエンジンがオートで起動し、非常用電源でモーターを動かしポンプが回って、弁が開いて水が送られるというシステムでは、どこかで故障やミスが入り込む余地がある。

最新式の原発では、自然現象を利用して冷却する方式が取られているようだ。先週も日立GEが、空冷方式の冷却系を開発したニュースを見た。自然に任せて冷却が続くというシステムは、現在のシステムよりはるかに素晴らしいが、それでも機械ものは心配がつきまとう。重力で水を高いところから炉心に落として水浸しにするにしても、何かが詰まって水が十分に行かない場合が考えられる。あるいは底に穴が空いてしまえばだめだ。ここまで心配してしまうと、昔の原子力安全委員長の言ったように「原子炉の設計は不可能」になる。 

すると理想は、可能な限り自然冷却になる設計にしておいて、核燃料など危険なものはあまりたくさん集めないこと、原子炉を建設する場所は十分に人の住むところから離すということかもしれない。原子炉の設計は、周辺住民の安全まで配慮して行われるのが当然だ。津波被害の反省による住宅地の高台移転のように、せめて原発の5キロ圏内を居住出来ないように普段から規制しておけば、万一の時の防災計画立案がずっと楽になるだろう。50年前に戻れるならそうしたい。

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