日本エネルギー会議

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仕事と記録

理化学研究所STAP細胞の一件では、実験ノートが二冊しかないことが問題となった。科学的実験ではなによりも記録が大切ということだ。製薬会社の現場の話を聞くと、まず必要な手順書を揃えることから仕事が始まる。使用する道具の確認と記録。手順をひとつやってはそれを記録するので、時間が倍かかり、派遣社員を増員したが恒常的に行う残業は一向に解決しないそうだ。

工場は国際的な機関の発行する品質や安全や環境に係る認証を得ることと、それを維持するために記録を残さねばならない。海外の顧客は、製造段階のすべてに記録があることを契約の条件としていて、本国から工場に監査に来ると、いちいちそれらを確認する。医薬品や食品の製造現場では、これが生産性のネックとなり、コストの一部になっているが、現場の作業者の士気にも大いに影響している。

原発の現場でも、メンテナンスなどに品質保証のやり方を取り入れてから、細かに記録を残すことが電力会社の発電所員の仕事の大きな部分を占めるようになった。原子力安全・保安院の検査に耐えるためには、膨大な資料作成が必要で、原子炉メーカーなど工事発注先の職員の応援も求めた。また、子会社からはそのために電力会社に逆出向することさえあった。定期検査中でも事務所からほとんど出ずに、深夜までパソコンに向かう所員からは、現場の管理が疎かになるとの心配の声が上がっていた。

原子力規制委員会による各発電所の新基準適合審査が山場を迎えているが、電力会社やこれを支援するメーカーは山のような資料づくりで疲労困憊。これが運転後の定期検査や変更申請などに続いていくのではないかと今から心配だ。

記録作業は企業防衛のために必要なこととはいえ、それが過剰な時間外となり、仕事のやる気を削ぎ、現場で実物に触れる機会をなくし技術伝承などが出来なくなっている。かつてベルトコンベア導入で、人が機械に使われるようになったように、記録することが、作業をする人の心と体の健康を害するような状況になっている。手段が目的化し、安全や品質のためにやっている記録が、逆に安全や品質のレベルを低下させているというのはどう考えてもおかしい。

最近の犯罪捜査や警備では防犯カメラやセンサー、画像解析技術の活用が目立っている。また、コンビニ、宅配など物流の世界では、バーコードやセンサーの活用がめざましく、省力化とともに記録も取れるようになっている。また、銀行業界においても業務の機械化が一段と進んでいて業務をやる度に記録や整理が自動的に行われている。原子力メーカーは原発関連機器の製造課程において、電力会社は原発の運用管理において、求められる記録を自動的に作成する機械を開発することが急務であり、規制側もそれに協力するべきである。

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