日本エネルギー会議

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賠償増額の波紋

文部科学省が所管する原子力損害賠償紛争解決センターは、浪江町住民1万5千人が集団で精神的損害に対する賠償を月10万円から月35万円に増額するよう申し立てた件で、月15万円とする和解案を住民と東京電力の両方に提示した。このニュースは主に福島の地方紙や地方局で報じられたが、全国紙地方版では小さく扱われた。

今回の和解案に対し東京電力は即刻受諾することはないと思われるが、今までのいきさつから考えると折り合うと見られる。浪江町の馬場町長は仲介案受け入れの方向だが、いずれ住民説明会が行われる。今回の増額はさまざまな問題を内包しており、各方面に影響を与えることは間違いない。その問題とは、第一に、町が代理人となる集団申立てでの和解案提示であり、他の大熊町、双葉町、富岡町などに対して住民側から突き上げがあると予想されること。

第二に、従来の増額例は要介護など特別な条件の人に対する増額であり、すべての住民に対して一律に増額を認めたことは始めてであること。

第三に、増額の理由として、避難が長期化することで生活環境が劣悪化し、精神的負担が大きくなったこととしていること。今回は、原発事故から1年後の2012年3月~14年2月までの2年間を対象に支払うとしているが、3月以降も引き続き避難が続いており、際限がなくなる恐れがある。既に、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は、区域解除後1年間は精神的損害賠償を支払うことを決めており、町村によっては政府の区域解除にかかわらず、住民の一斉帰還日をインフラ復旧の状況などをもとに、独自に決めるという方針を打ち出している。

長期化したのは東京電力のせいだけではない、国も事故対応やその後の除染などにおいて避難を長期化する原因を作り出している。にもかかわらず、東京電力だけに賠償支払を集中させてよいかという疑問も起きる。(既に東京電力は国有化されているのと同じなのでかまわないというのかも知れない)

第四に、東京電力は帰還困難区域の住民に対して、一人700万円の追加の精神的損害に対する賠償を支払う(これで精神的損害賠償は最後となるという意思が感じられる)ことを打ち出していて、既に請求受付を開始している。これと今回の浪江町民に対する賠償増額はどのような関係になるのか。

第五に、東京電力の支払う賠償がさらに巨額になること。浪江町住民への今回の支払だけで200億円を要する。対象者が広がれば(現在でも、避難区域から約8万人が避難中)、1000億円以上が追加賠償となる。帰還が何年も遅れれば数千億円になる。

第六に、精神的損害賠償は不動産の損害賠償などとは違い、生活費のように毎月入るものであり、避難者はこれを三年以上にわたって受け続けており、現在の生活はこれにより安定している。これ以上続けば、今のような避難生活が続く限り、自ら生計を立てていく意欲も失っていく。周囲からは、「東電宝くじ」どころか「東電年金」と言われかねない。

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