日本エネルギー会議

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思わぬチャンス

原発の最大の短所は、核や放射線に対する人々の受容が難しいことであり、それらに対する否定的態度は本能に根ざしているため、扇動されやすく、一度思い込むと科学的な説明をしても容易に変えることが出来ないと前回書いた。  

福島県議会は第二原発も含めて福島県における全原発を廃炉するように決議し、知事は東京電力に対して決断を迫った。こうした動きを見る限り、原発に対する拒否感は決定的になったかに思える。全国的に見ても、福島県民は拒否感が強いだろうと想像されている方が多いはずだ。

福島第一原発の事故で、原発に対する非受容が決定的になったかに見えるが、私はそうではないと思う。福島県民は原発事故により撒き散らされた放射性物質のなかで生活し、低線量の被ばくをし続けるという体験を三年あまりした。今まで放射線という目に見えないお化けのようなものに対する恐怖感があったが、実際にお化けと遭遇したことで、お化けの正体を知る機会が得られたとも言える。

原発反対派は原発を日本からなくす千載一遇のチャンスと思ったが、お化けの正体が分かった人々は、月日が経つにつれて、反対派の言っていたことはオーバーだったことを理解し始めた。漫画「美味しんぼ」を見て、多くの人が、「自分は同じように被ばくしたはずだが鼻血など出ない」と漫画の内容に疑問を持った。反対派は思わぬ反応に面食らったはずだ。

反対派にとって、実際に事故が起きてしまったことは両刃の剣であり、起きなければいつまでも人々の恐怖感を煽っていられたが、日が経つにつれて実際に被ばくしたのにもかかわらず、現実の住民の健康状態が健全であることから反対派の言うことに信頼が持てなくなってきた。原発反対運動があいかわらず盛んな東京では、こうした実感は得られないものだ。

もちろん福島県民はそれを声高には言わない。子供のためにと、自宅が避難区域ではないにもかかわらず、自主的に遠く他県に避難したり、家族を別居状態にしていた人も、他の理由をつけてこっそり元の場所に戻る人が増えている。それに対するあからさまな批評は、県内では御法度である。

国や県の安全宣言そのものは人々に簡単に受け入れられないが、県民の実感による裏付けが、それらの内容を正当化していくという逆の順序で受け入れられていくというのは皮肉だ。

今は福島県だけだが、最悪と言われた原発事故の健康被害や食品中の放射性物質がそれほど心配しなくてもよいという事実は、じわじわと周辺に広がって行くと思われる。「ピンチはチャンス。その逆も真なり」とはよく言ったものだ。

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