日本エネルギー会議

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発災型防災訓練

阪神淡路大震災以来、防災訓練の世界では従来の「会場型防災訓練」と呼ばれるものに代わって、発災型防災訓練が積極的に取り入れられるようになっている。会場型防災訓練はサイレンが鳴ると同時に訓練参加者が一斉に避難場所へ集合し、会場に到着後みんなで初期消火活動や応急救護訓練などが実施されるといった訓練方法。毎回変化が少なく、訓練参加者も受動的に訓練を行うためマンネリになりやすい欠点がある。

東京消防庁が発案したと言われている発災型防災訓練は「シナリオのない防災訓練」とも言われ、普段、生活を営む場所そのものが訓練会場となる。訓練開始とともに、各所で「火災」「建物倒壊」「負傷者発生」といった模擬災害の発生を想定するがシナリオはない。大災害時には消防車や救急車などの緊急車両はすぐに到着することができないので、近所の人たちで協力しあい行動を起こさなければならないが、このシナリオのない訓練を行うことで、住民ひとりひとりの防災意識や防災行動力の向上につながる効果がある。ただし、この訓練は関係者の負担がそれなりに大きいようだ。

従来、原発の事故訓練は、原発構内の社員、協力会社従業員向けのもの、構外の自治体職員や住民向けのもの、いずれも概ね「会場型防災訓練」方式であり、発災型ではなかった。私が経験した原発内の社員向けの訓練は、会場型で詳しすぎるほどのシナリオが出来ていたが、対策本部長であった所長が時たまアドリブを入れて「ついでにどこどこも点検して結果を報告するように」などと指示をしていたので、幹部が発災型の必要性を感じていなかったわけではないようだ。

だが、実際に発災型でやれば住民をかえって心配させる、あるいは発災型でやる自信がないなどの理由で、やろうとしなかった。原子力の世界は閉じられており、防災についても、放射能汚染があるなど特殊性ばかりを強調し、世の中の動きに目を塞いでいた。

福島第一原発の事故の結果、「想定外は起りうる」との教訓を得たのであれば、シナリオなしの訓練にどんどん挑戦することだ。安全神話と決別した国と原子力業界は、これからの原発事故の訓練は会場型に加えて、発災型をどんどん取り入れ、想定外への対処能力を向上されておかねばならない。また、そうした防災訓練時には、他電力や警察、消防などの関係者を招き、第三者から批評をもらうことも大切だと考える。

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