日本エネルギー会議

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政権のエゴイズム

関西電力と九州電力の予備率が、この夏3パーセントを切っている。東京電力からの融通がなければ、1パーセント台になるため、両社の給電指令所では温度計を見ながら、連日綱渡りを続けている。もし、需要ピーク時に数十万キロワット級の火力発電所の一つにトラブルが起きれば、大停電が起こる可能性が高い。その復旧には何時間もかかることが予想され、そうなれば経済的損失だけでなく社会的混乱は測りしれないものがある。このピンチは夏が終わるまで続く。

一方、法的には稼働させても問題のない各地の原発は、神妙に原子力規制委員会のお墨付きが出るのを待っている。原発は立ち上がらせようにも、水力発電所のように即刻立ち上がることは出来ず、また、火力発電所のような短時間ではフルパワーにはならない。原発がベースロード電源に位置づけられるのは、臨機応変な起動が出来ないことも意味する。

関西電力や九州電力の原発が今のまま再稼働すれば、福島第一原発のような事故が起きるリスクは、僅かであるとはいえゼロではない。だが、どう見ても多数の火力発電所の中の一基が突然停止するリスクの方が、両社の原発のどれかが過酷事故を起こして対応が上手くいかなくなるリスクより大きい。

二年前、民主党政権時代に野田総理は「国民の生活を守るために、大飯発電所3,4号機を再起動すべきというのがわたくしの判断であります」と記者会見で表明した。ドジョウもなかなかやるものだと当時私は思った。

今の安倍政権は当時の野田政権に比べれば、遥かに支持率が高いのに、なぜ限定的な再稼働の指示を出さないのだろう。安倍総理の口癖である「国民の生命と財産を守る」は、何も領土問題に限ったことではあるまい。産経新聞は「原発ゼロの夏、いまここにある危機に目を背けるな」と書いたが、ここにある危機を前に何もしないのは「国民の生命と財産を守る」ことから大きく外れている。

推測するに、安倍総理のこの不可解な行動の理由はただ一つ。政権への支持率を気にしているからだ。原発再稼働を望まない国民が結構多いことはアンケート調査などでわかっている。再稼働指示で人気を落としては集団的自衛権など一番やりたいことが出来なくなる恐れがあると読んでいるようだ。「国民の生命と財産」を危険にさらしての、政権支持率の維持など政治家のエゴイズムとしか思えない。

原子力規制委員会に「世界で一番厳しい基準」による審査をしっかりやってもらうことと、目の前の危機に対処するための期間限定的な再稼働指示は別ものだ。これを混同してはならない。自公政権は先の選挙で原発を将来的には出来るだけ少なくすると約束しているが、これに対する具体的な取り組みは一向に見せず、最近ではなし崩しに元の路線に戻ろうとしているのではないかと国民は疑いの目で見るようになっている。元に戻すなら、戻す理由を明らかにして、はっきりと方針変更を打ち出せばよい。

原子力規制委員会が審査合格を出してからの再稼働に至る判断にしても、政権と委員会が責任を押し付け合うようなことをされて迷惑するのは、国民であり防災計画の作成もその結果も任されてしまった立地自治体だ。

安倍総理は九州の財界人に対して「川内はうまくやります」と言ったというが、安倍総理の言動には「要領主義」が見え隠れしている。一国のエネルギー問題や原子力に対しては「要領主義」ではなく「まともに論ずること」こそが大切である。私は今夏の電力ピンチが気になるとともに、安倍総理の「要領主義」を国民が黙認し、皆が真似るようになることが心配だ。

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