日本エネルギー会議

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ある心配

我が国の原発は既に3年以上も停止状態を続けている。原子力規制委員会から新基準に達していると認められ、地元自治体の了解が得られれば、国から再稼働の許可の出た原発は今年中にも再稼働する予定だ。国中の全原発がこれほどまでに長期間停止した例はいままでにない。大相撲に例えれば異例の長期休場の後の本場所だ。怪我は治っていても、稽古で相撲感が戻っているかどうかを確認したいところ。再稼働した途端にヒューマンエラーによるトラブルでは、また問題が大きくなる。一番バッターの緊張感は大変なものになるだろう。

飛行機のパイロットなら、フライトシミュレータで地上の様子、雲の状態を目で確認し、上昇や旋回すれば身体が傾くことにより、実際にフライトしたときとほぼ同じ状態で感覚が取り戻せる。パイロットは天候が悪くて雲の中で視界がゼロになるとレーダーなど計器による操縦となるが、原発では最初から外界が見えない密室状態で運転が行われる。現場の機器にカメラがついている所は少なく、現場に運転員を見に行かせて電話やページング(呼び出し装置)で報告させることくらいしかできない。

原発にもシミュレータがあるが、操作をしても、その結果はスイッチのランプやメーターの針の動きでしか確認出来ないのが飛行機の操縦とは違うところだ。操作はセンサーやメーターが正常に働いていることを前提としたもので、教官がわざと誤った指示値を出すような訓練はほとんどない。パイロットに比べて原発の中央制御室の運転員は、違った意味で難しい運転技術を要求されている。原発の運転操作は「プロの将棋指しが将棋盤を見ないで手筋を読むようなもの」と会社の同期生の元運転責任者から聞いたことがある。

いままでは、長期間休んだあとの運転開始に当たっては、他のプラントに行って実際の起動操作を見学することが行われていた。また、順調に運転がされた場合、運転班によっては過去数年間、運悪く起動停止操作に当たることがなかったケースが出てくる。この場合も、若手が他班の行う起動停止操作を見学に行くことがあった。

今回はどの原発も同じように長期間運転していないため、見学に行くことも出来ない。新基準に適合させるために、新しい設備も増えマニュアルも追加され、確認事項も多くなっている。各社のシミュレータも実機の改造に合わせて改造されているはずだが、実機と同じような動きが出来ているか確認しておく必要がある。

再稼働に当たっては、原子力規制庁の職員も立ち会うと思われるが、どんな点を見ることになるのだろうか。大相撲では行司は子供の頃から各部屋の土俵の上で鍛えられている。本場所の土俵下の審判は全員元現役力士だ。私が現役の頃は、原子力安全・保安院の依頼で新規採用職員が発電所に何ヶ月か滞在していた。再稼働まで半年を切ったが、原子力規制庁は再稼働に際して、職員の教育訓練をどのようにやったのだろうか。

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