日本エネルギー会議

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大義の確認

先週の大河ドラマ「軍師勘兵衛」で、秀吉らに主君を裏切った明智光秀の仇を打つ大義があることが、大名諸侯や民衆の支持を得るために大切なことだったことが描かれていた。大義は時代を超え、戦争を含めどどのような行為についても求められるものだ。

かねてから原子力は「国策」という大義があり、「国産」「安価」「安定」「環境」がそれを支える4本柱となっていたが、電力の完全自由化を前に、原子力関係者が国民に向かって、今後も原子力推進に大義があることを明らかにする必要がある。

「国産」については、技術的にはどの電源も我が国の技術である。燃料については、原子力が燃料棒に必要なウラン資源を海外に依存しているのに対して、再生可能エネルギーが完全なる国産エネルギーであり、日本近海のメタンハイドレードが開発されればこれも国産となる。LNG、石炭、石油、シェールガスはほとんどが国産ではない。原発の存在は我が国の資源外交上のカードとなると考えられている。

「安価」については、バックエンドの費用がどの程度かかるかが依然としてわからないため、他の電源との比較が出来ない。福島第一原発の事故によって新基準適合のための追加投資が必要となっており、この分のコストアップは新設の原発も含め確実となっている。これに対して火力発電も高効率の発電所が開発されており、以前と比較すると発電コストは下がっている。化石燃料はシェールガスの開発が進み、中国や途上国の燃料資源需要の急増の影響を緩和している。再生可能エネルギーのコストは、水力や地熱を除くと、原子力や火力の数倍であり目下最大の短所となっている。現在は補助金によってその価格差が埋められているが、技術進歩とともに海外では年々競争力がついてきており、我が国においても徐々に補助金が減る方向である。

「安定」については、再生可能エネルギーの宿命的な短所であり、特にソーラー、風力発電は不安定で稼働率は2~3割程度しかなく、需要とは関係なく供給が行われる。これに対して、火力発電や原子力は8割程度の稼働率が可能である。しかし、これまでの実績からすれば、我が国の原子力は事故などで長期間停止することが多く、6割程度の稼働率となっており安定的とは言い難い。

次に燃料供給面から見れば、火力発電で使用する化石燃料は海外からの輸入であり、国際情勢によってその安定性は大きく影響される。これが、国の社会経済の血液である電力の安全保障上大きなネックとなっている。備蓄も行なわれているが体積が大きく、ウランがより運搬貯蔵に優れている。また、LNGは長期の貯蔵に向かない。

「環境」については、再生可能エネルギーの最大の長所であるとされている。原子力も環境に優しいとしてきたが、放射性廃棄物を出すことは環境に悪いのではとの指摘も受けている。火力発電は石炭をはじめ、温暖化ガスの主な発生源であり、短所であるとされてきた。電力会社はこれを緩和するために高効率化、炭酸ガスの貯留技術開発、LNG比率の上昇などに取り組んできた。

私は、現時点での原子力の大義を次のように考える。
(1)
「国産」においては、化石燃料がメタンハイドレードで「国産」になる可能性があるのに対して、原子力は「準国産」であり続ける。いままで、原発の存在は、資源外交上のカードであったという認識は、その割合が少なすぎるし、(福島第一原発の事故前で、全エネルギーの6パーセント)すぐには増やせるものでもなく、カードとしての力は弱い。ただし、国産化努力の結果としてあらたに「輸出力」という大義と外交カードが生まれている。
(2)
「安価」においては、再生可能エネルギーが徐々にではあるが着実に競争力をつけつつある。火力発電は高効率、燃料購入先の多様化、シェールガスやメタンハイドレードの登場でコストがもう少し下がる可能性がある。これに対して、原子力のコストダウンのためには、稼働率9割達成、バックエンド費用の確定、古い原発の建て替えによる大型化が必要であり、大義とするには極めて厳しい状況にある。
(3)
「安定」においては、再生可能エネルギーに大型蓄電池などの併用によって不安定さを克服する動きがある。火力発電の燃料確保は、国際情勢次第であり不安定さを否定出来ない。最近、国際情勢は厳しさを増しており、中東をはじめ世界各地で紛争が起きている。アメリカは世界の警察官の役割を降りたがっており、燃料供給途絶のリスクは以前より遥かに高まっている。これが原子力の大義の評価にプラスの影響を与えることになる。各国が原発建設に向かえば、「輸出」の大義と外交カードがより強く意識される。しかし、原子力は社会的要因や自然災害など不確定要素が多く、高稼働が実現するかはいまだ見通せない。
(4)
「環境」については、再生可能エネルギーがまだ負の影響が見通せないのに対して、火力発電は高効率化、二酸化炭素の貯留などに取り組んでいる。また、環境負荷の少ないLNGへのシフトが試みられている。ただし、これ以上の温暖化防止のために、石炭火力の運転が制限される可能性がある。これに対して、原子力は、社会の理解を得て、廃炉や放射性廃棄物処分の道筋をつければ確実に「環境」を大義とすることが出来る。温暖化防止が国際的な義務となっているため、目標未達成を諸外国から責められることに国民感情が耐えられないかもしれない。放射性廃棄物処分の課題は従来どおり先送りしながら、当面原発を可能な限り再稼働させようという意見が強くなる可能性もある。
(5)
いままで原子力の隠れた大義として、一部の人たちからは「核保有能力の維持」が指摘されていたが、使途の説明出来ないプルトニウムの増加が国際問題になれば、平和利用である原発の大義にも影響しかねない。

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