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標準ケースの誤解

新潟県は昨日、東京電力柏崎刈羽原発の事故発生時に原発から半径30キロ圏内の住民が自家用車で逃げることを想定した「避難時間シミュレーション」の結果を発表した。本日、各紙各局が伝えたところによれば、半径30キロ圏内の住民の避難に「標準ケース」では、住民の9割が避難するのに12時間かかり、住民全員が30キロ圏から脱出するには標準で18時間との結果になった。

県はシミュレーションにあたって、晴天時の平日日中の避難を「標準ケース」と設定し、原発から5キロ圏内に避難指示が出ると同時に、同圏内の全員と、避難指示を受けていない5~30キロ圏内の住民の4割が、30キロ圏外への脱出を目指して自家用車で走り出すと仮定した。このほかさまざまに条件を変えて約40ケースで試算し、うち26ケースの結果を報道陣に公開した。

これを読むと「標準ケースで12~18時間で脱出出来る」と思ってしまうが、「標準ケース」という言葉に惑わされてはいけない。「標準」というといかにも代表的なケース、一番あり得るケースと誤解してしまうが、そんなことはない。事故が起きるのが平日の昼間となっているが、まず平日の昼間という前提がある。そのときに事故が起きる確率はカレンダーの半分以下だ。平日の昼間というのは家に一番人がいない時、ましてや共稼ぎが多く、子供は学校だから、残っているのは高齢者くらいだ。世帯単位で自家用車を使って避難するというが、共稼ぎしている夫婦のどちらかが、高齢者や子供を迎えに行くことになる。これは東日本大震災や福島の原発事故の例から言えることだ。着の身着のままといっても、すぐには出発出来ない。貴重品、下着、食料品、位牌などを持っていくと出かけるまでに私の経験では30分はかかる。

休日や夜に、一家全員が揃っている可能性は高いが、平日の昼間に全員で家にいて、すぐにマイカーで出ることはありえない。そんなありえないケースを「標準ケース」という名称にしたのでは、避難について住民に誤解を与えてしまう。

原発で過酷事故が起きるとすれば、自然災害がトリガーとなることが、ほとんどだと考えられる。そうであれば、「標準」と銘打つケースでは、家にはほとんど人がおらず、避難のための道路や通信設備の損傷は織り込んでおくべきだ。県原子力安全対策課は「避難時間の試算結果を絶対視せず、他の条件を考え合わせて被ばくを避ける避難計画を作りたい」と話しているというが、その通りだ。

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