日本エネルギー会議

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避難中の心配事

「死の淵を見た男」が腹を決めて、なんとか原子炉内に注水しようとしていた頃、私たち住民は一斉に山に向かって避難を始めていた。2011年3月27日のことである。その時のことを思い出すと、誰もが少しでも早く原発から離れることと、ガソリンが持つかということで精一杯で、死ぬことなど頭に浮かばなかった。情報もなく線量計もないので、どうなっているかがまったくわからないので、逆に心配のしようもなかった。無我夢中とはこのことだ。

川内市や新潟県で避難計画のシミュレーション結果が発表されているが、その際に住民に線量計を準備するかなどは聞こえてこない。福島第一原発の事故では、モニタリングポストは停電でダウンしたが、今度は数も数倍にして非常用電源もつけたらしい。避難する住民はこれを通りがかりに見ることになるが、デジタルの数値だけ見ても、その意味が理解出来ないだろう。あらかじめ通常の値を教えておくか、そばに数値を判断するための目安などを示しておくことが必要だ。そうしてあっても、数値が通常値より少しでも高ければ住民に衝撃が走るだろう。

そのため、毎年防災訓練をする際に、個人線量計の扱い方や環境放射線、放射能汚染に関する知識をよく教育しておく必要がある。その範囲は、30キロ圏内はもちろんのこと、その外側の住民にもやっておく必要がある。個人線量計はヨウ素材と同じで、あらかじめ配布しておいてもどこかにしまい忘れてしまうので、避難の際に通過地点で説明書きとともに配布すると確実である。新潟では事故当日、区域内でイベントが行われて多くの外来者がいたというケースも検討されたようだが、そのような場合も配布が有効になる。

道路の状況をいち早く把握し、避難ルートを確定して要所に誘導員をすばやく配置出来るかも、混乱を食い止められるかの鍵となる。夜間、休日に事故が起きた場合は、この要員確保がもっと大変になる。対策として最低限の人数を24時間拘束する体制を作っておかなければならず、自治体や関係機関の負担は極めて大きくなる。

福島第一原発の事故では、まったく準備もなく、行き当たりばったりの避難をした住民たちだったが、何もない、何もしらないことで、まっしぐらに避難し、余計な混乱はなかったというラッキーな結果に終わった。各地で避難計画ができて「知れば知るだけ心配事が増える」というのも、皮肉なことである。

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