日本エネルギー会議

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佐賀県が避難時間推定

佐賀県が玄海原発の緊急時避難計画に基づく避難時間の推定結果を発表した。鹿児島県の川内原発、新潟県の柏崎刈羽原発に続いて三例目になる。結論としては、期待する時間内に住民は避難完了ということになっているが、佐賀県のホームページで見る限り、数字合わせに終始しており、次のような疑問が残る。
(1)
避難指示が出される全面緊急事態の時点から水素爆発による大規模放出までの23時間以内にPAZ(5キロ圏内)の住民が避難可能かを検証したとしているが、そもそも福島第一原発の事故で、3月14日の放射能の大規模放出は水素爆発によるものではなく、2号機の原子炉建屋最上階に達した大量の放射性物質を含んだ蒸気が、開いていたブローアウトパネル(3号機水素爆発の衝撃でたまたま扉が吹き飛んだ)から屋外に流出したのと翌日格納容器の破損部分からの生蒸気が発電所敷地外にまで流出したものだ。このことは、石川迪夫著「炉心溶融・水素爆発はどう起こったか」で明らかにされている。何故、実際には起きなかった23時間後の「水素爆発による大量放出」と仮定したのか。全電源喪失から最短何時間で外部に大量放出の可能性があるのかについて、再度しっかりした根拠が示されるべきだ。避難のきっかけの例として電源が30分以上失われた場合や、原子炉冷却機能喪失などが挙げられているが、それらの事実がいつの時点で把握されるのか、そこから対策本部の避難指示までどの程度のタイムラグが生じるのかは不明である。
(2)
住民全員へのパーフェクトな避難指示徹底、それに準備時間ゼロで、家族が皆乗車しての100パーセント自家用車避難、ガソリンが足りることや車の整備などを前提にしているが、福島の体験からして現実的とは言い難い。それぞれ時間がかかるが、特に要支援者の場合は、避難開始までに相当の準備時間が必要だ。
(3)
道路が通行止めとなった場合を想定しても時間内に避難可能としているが、避難開始時にそのことを把握し、避難する人たちに伝達出来るのか、あるいはその情報を待たずに既に避難行動を取った人が、通行止めに遭って引き返すなど大きな混乱が予想されるのに、時間内避難が可能なのか。
(4)
原発から同心円で避難対象を考えているが、福島第一原発の事故でも問題になったように、少なくとも風向くらいは考慮して避難対象者の優先度、方向を考えて指示する必要があるのではないか。さらに、PAZ(5キロ圏内)の住民をUPZ(30キロ圏内)に避難させるのではなく、そのまま30キロ圏外に避難させることとしているが、そのことはUPZ(30キロ圏内)の住民に「自分たちは取り残される、後回しにされる」という差別感を与えないか。福島原発事故では、避難先となった川内村の住民も数日後に避難していた富岡町住民と一緒に全員さらに先に避難となったので、川内村の住民にそのような感情は起きなかった。
(5)
UPZ(30キロ圏内)全域で毎時500マイクロシーベルトを超える空間放射線量率が測定されて避難指示となるとしているが、誰が測定するのか、全域といっても結局は一部しか測定出来ず、全域で超えたのを確認していこうとすると避難指示はいつまでも出せないのではないか。UPZ(30キロ圏内)の中で毎時500マイクロシーベルトを超える区域だけを避難させようとしても、どのような線引きをするかが難しい。行政区別にやるべきという意見とあくまでも空間放射線量率で線引きすべきという意見が出てくる。
(6)
季節、曜日、時間帯、天候などが大いに制約条件となるが、このことについては、なんら前提条件として決められていないので、最悪が重なった時に全面緊急事態が起きても対応可能であるとの結果を示さねば住民の安心は得られない。特に自然災害と重なった場合を気にしているはずである。
(7)
今後の対応として、「交通誘導」「住民への周知」「要支援者体制充実」などを挙げているが、これらの課題を克服するためには、今より格段の体制の充実とハードの整備、訓練を重ねる必要がある。一つの方策、手段を示すだけではだめで、それが使えなかった場合にどうするかまで準備しておく必要がある。いつ全面緊急事態になるかは予測不可能であり、休祭日を含め24時間対応可能にするために人員を拘束しておかねばならない。そのためには対応に当たる人員を倍増しなくてはならないが、それだけの予算と採用が可能なのか。

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