日本エネルギー会議

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旧目標固執の影響

福島第一原発の事故で避難してから三年半が経過しようとしている。例え帰還困難区域であっても、早く元の家に戻りたいと希望する人は高齢者を中心に数多くいるが、私もその一人だ。8月には環境省が重い腰を上げて、除染に当たっては住民が実際に浴びる個人線量を重視する方針を打ち出したが、郡山市など自治体の多くは従来の除染目標である空間放射線量「0.23マイクロシーベルト」に固執している。これは、国の長期目標である「個人の追加被ばく線量年間1ミリシーベルト」を一定の条件で換算したものだ。

富岡町の除染計画、インフラ復興計画は、避難指示解除準備区域と居住制限区域を対象に、今年から3年計画で開始されたが、町の面積の三分の一を占め、私の家もある帰還困難区域については、いまだに計画さえない。このままだと6年後にも帰還出来るようになるとは思えない。避難から実に10年にもなってしまい、そのころ私は70代後半、家もそれまで維持管理出来るかわからない。

現在、我が家の庭でも空間放射線量は、かつての5マイクロシーベルト/時から2マイクロシーベルト/時まで低下し、家の中であればその半分以下だ。敷地は居住制限区域から100メートルほど帰還困難区域に入ったところだが、居住制限区域に家のある知人からは「北村さんの所の方が、自分のところより線量は低い」とよく言われる。言外に「それなのに賠償はそちらの方が多い」という皮肉が込められている。

線量的には今そこで暮らしても健康上の問題はまったくないのだが、インフラが復旧していない。電気などはすぐにも復旧可能だが問題は下水だ。町の仮設トイレでは家に帰った気がしない。福島県内でも原発立地の町村は財政が豊かだったため、下水の普及率が軒並み高水準。我が家も最初は浄化槽だったが、数年前に町から半ば強制的に下水本管につなぐ工事をさせられた。これが今回復旧で裏目に出ている。          


県の資料より

国や町の方針では、復興は放射線量の低い地域から始まる。高線量のところも時間が経てば線量も自然に低下し除染の負担も少ないと考えているのかもしれない。 インフラ復旧で工事業者が入るにも、まず除染をして線量を下げてからとしているから、先に下水配管の復旧をやることはない。旧避難区域の除染は国の直轄事業だから、町村は手出しが出来ない。

環境省は新たな方針を出すだけでなく、除染目標値も新たに定め自治体を説得しなければ方針は絵に描いた餅になる。ここはしっかりしてほしい。自治体は住民たちの説得に自信がないのだろうが、旧目標に固執していては住民のためにならない。 

先ごろ、川内村の区域解除をめぐって国の方針に一部住民が抵抗したが、遠藤村長は「帰還したい人を邪魔するわけにはいかない」と村として期日どおりの解除を受け入れた。賠償問題にからむことを心配し、住民の顔色をうかがいながら、やるべきことをやろうとしない首長が多い中で、賢明で腹の座った村長がいたものだ。

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