日本エネルギー会議

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強敵の出現

ウォールストリート・ジャーナル紙が伝えたところによれば、オバマ米政権は国内で稼働する火力発電所から大気中に排出される二酸化炭素を、2030年までに2005年比で30%削減することを目指す新たな規制案をまとめた。これはAPECで中国とアメリカが温暖化防止で具体的な提案をする伏線だったのかもしれない。2020年までの削減目標は25%。天然ガスに比べて発電量当たりのCO2排出が多い石炭火力が主な削減対象となる。

原発のない沖縄電力を除く日本の電力9社は、長期停止中のものを除くと火力発電所を計256基所有しているが、運転開始から40年以上が経過している「老朽」火力発電が67基と、全体の4分の1以上ある。従来、火力発電所の設備利用率は50パーセントを切っていたが、原発の停止を火力発電のフル稼働でカバーした結果、二酸化炭素が8パーセント増加したとされている。原発が再稼動すればその分は二酸化炭素排出が減るというわけだ。ただし、原発も3分の1は10年以内に廃炉となる可能性がある。

日本において、原発再稼動以外に最も手っ取り早く発電に絡む二酸化炭素を削減しようとすれば、老朽化した火力発電所を最新鋭にすることだ。火力発電は歴史が古く、電源に占める割合が多いわりにはその存在が目立たないが、下に示す東京電力の例のように、今も着実に熱効率を上げ進歩を遂げている。

そして、今、注目されているのが、『究極の高効率火力発電–SOFCトリプルコンバインドサイクルシステム』だ。三菱重工技報 によれば、「SOFC(固体酸化物形燃料電池:Solid Oxide Fuel Cell)は高温作動の燃料電池で,その高温排熱をガスタービン複合発電に活用することにより,効率70パーセントという極めて高効率の火力発電システムを構成することができる。

三菱重工では1980年代からこのシステムの開発を進め、2004年度からNEDOの委託研究で、SOFCとマイクロガスタービンを組み合わせコンバインドサイクルシステムの製作・運転のテストを実施し、2010年度からはガスタービンコンバインドサイクルの上流にSOFCを置いたトリプルコンバインドサイクルの本格的な開発に向け,東北電力と共同研究を開始している。

トリプルコンバインドサイクルは,石炭を含む化石燃料の持つエネルギーを,SOFC,ガスタービン,蒸気タービンの3段階で次々と利用することにより,極めて高い効率で発電することが出来、現状のあらゆる熱機関に較べて圧倒的な効率向上が見込まれている。火力発電が公害問題を克服し、社会に受け入れられていることも考えると、トリプルコンバインドサイクル火力が、原発の強敵であることは間違いない。

また、三菱重工は原発、新鋭火力どちらに転んでもビジネス展開が有利に出来る体制が出来ていることも、信州上田の真田幸村親子や大河ドラマに登場している黒田家のごとき卓越した戦略性ではないか。

電力会社の内部でも、今までは原子力部門の力が優位に立っていたが、福島第一原発の事故で味噌を付けた。これからトリプルコンバインドなどを武器に火力部門の巻き返しが始まることが考えられる。

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