日本エネルギー会議

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原発と原爆

私が現役の頃、原子力PAは一般の人々が原発と原爆を同一に考えている誤解を解くことからはじまった。「原発も原爆も核分裂を利用するのですが、原爆は大量殺害を目的としているため、核分裂反応は制限されることなく急速に起こり、大量のエネルギーを瞬時に発生させます。一方、原発は平和利用であり、核分裂の際に生じる熱で水を沸騰させ、その蒸気でタービン発電機を回転させて電気を起こします。原子炉は制御され、核分裂反応がゆっくり起こるよう作られています。」「原爆と原発では、使われるウランにも違いがあり、原爆では燃えるウランをほぼ純度100%にしたものを使います。瞬時に核分裂反応を起こして、大量のエネルギーを一気に発生させるためです。これに対して原発では、燃えるウランを3~5%しか含まないものを使います。」これはこれで正しい説明だったと思う。

しかし、「大量の放射能を周辺に放出するポテンシャルのあるものを、設備と人の手で管理している」という図式は、原発でも原爆でも同じだということに気づく必要がある。例えば、某国における核弾頭を搭載したミサイルの発射基地の中では、核弾頭という恐ろしいものが存在する。アメリカのICBMの管理は民間委託だそうだが、某国のミサイルは国防軍の直轄だろう。それがミスで、あるいはオペレータの独断で発射されないように、何重にも防護措置が取られており、オペレータの教育訓練も念入りに行われているはずだ。

原発では原子炉の中に核燃料が存在しているが、自然災害等で全電源喪失し、メルトダウンすれば福島第一原発事故のような大きな被害が生ずる。そのため、原発は何重にも事故防止装置や電源があり、オペレータは十分に教育訓練された上で操作をしている。

ミサイルが東京に照準を合わせたものであれば、東京都民はその発射基地の存在やその管理状況に対して、言い知れぬ不安感を抱くであろう。それと同じように、原発事故の被害が及ぶ可能性のある範囲の住民も原発に言い知れぬ不安感を抱くのはもっともだ。某国のミサイルの場合、その管理状況は知る由もないが、もし、照準が東京であり、管理状況がずさんだとわかったときは、東京都民は神経衰弱になり、一部の人はすぐに東京を脱出するかも知れない。

こう考えると、原発は半径30キロ圏が無人である敷地の中にない限り、周辺住民の不安を完全に拭い去るのはむずかしそうだ。
福島第一原発の事故の際に、沖縄や北海道に子供連れで避難した人に対して、いままで私は、「そこまでするのはいくらなんでも怖がりすぎ」と批判的だったが、このエッセイを書きながら、彼らの行動もある程度理解してあげるべきだったと思い直しつつある。国や電力会社は原発の地元住民の方々に、「大丈夫です、お任せ下さい」と言うだけでなく、原発の持つポテンシャルや運転保守管理のやり方、万一のための備えがどのようなっているかを、これまでとは違う丁寧さで説明していく必要がある。

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