日本エネルギー会議

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記録が語る現場の問題点(5)

福島第一原発の事故現場で恐怖と戦いながら危機的状況を乗り切った福島原発所員の行動記録がある。それは原発事故を防ぐための、また適切な対応を考えるうえの貴重な資料でもある。読んでいくと、所員たちが何に対して、どのように困ったかが端的に伝わってくる。青字は記録、黒字はそれを読んで考えた私なりの指摘である。

<3,4 号機中央制御室>
・海側のサービス建屋に避難指示に行っていた運転員が「大きな津波がすぐ傍まで来ている」と中央制御室に大声で叫びながら戻ってきた。
・津波によりD/G が停止し、全交流電源が喪失したが、3 号機について、直流電源で操作可能なRCIC 及びHPCI の状態表示灯は点灯していた。
・全交流電源喪失により、中央制御室3 号機側照明は非常灯のみ、4 号機側照明は真っ暗となった。2 月頃に現場巡視用にLED ライトが導入されており、これを明かりに活用し、4 号機は定検中であったため、3 号機を中心に、原子炉水位等のパラメータを確認していった。
・ また、全交流電源喪失時の手順書をもとに、RCIC、HPCI の運転制御に必要なバッテリーを出来るだけ長く維持できるよう、監視及び運転制御に最低限必要な設備を除き、負荷の切り離しを行った。
・16:03 に中央制御室の操作スイッチにてRCIC を起動し、原子炉水位、RCICの吐出圧力や回転数を確認し、原子炉の水位確保を開始した。
・サービス建屋3 階では運転員が津波の監視を実施していた。津波は海側の通路であるアーケードの高さまで来ていた。その後、津波が引いて放水口や取水口が砂浜のような状態に変わる光景を見て,この次は更に大きな津波が来て、サービス建屋2 階の中央制御室まで津波が入って来るのではないかと恐怖を感じた。
・3 号機原子炉建屋5 階の天井クレーンから降りられなくなった作業員がいるとの情報が入ったため、運転員が現場に向かった。原子炉建屋5 階は非常灯のみとなっており、床面にスロッシングによるものと思われる水溜まりが確認されたが、その他に異常はなかった。天井クレーン付近を確認すると壁際に作業員がいたため、懐中電灯で照らしながら、運転員が作業員を1名ずつ補助して降ろした。

<5,6 号機中央制御室>
・津波発生により、5 号機の2 台と6 号機の2 台のD/G が停止したことを確認。6 号機の別の1台のD/G は周波数調整を行い、運転状態を維持した。
・5 号機の中央制御室は照明が落ち,非常灯となったが、非常灯もだんだんと消え、真っ暗となった。6 号機の照明は通常と変わらず。

指摘事項9
1.
直流電源が生きていたところと死んだところはどこか。その原因、対策を決めて実施する必要がある。
2.
現場で取り残されている作業員がいるかどうか確認はどのように行うのか。また、救出のための人や手段などは確保されているのか。探査ロボットの配備、捜索訓練をする必要がある。
3.
現場巡視用LED ライトの有用性に鑑み、建屋内の要所にこれを配備しておく必要性がある。
4.
運転制御のための電源確保として手順書による電源切り離しの訓練を運転員の操作訓練カリキュラムに取り入れる必要がある。
5.
大きな津波が来た時はどこまで海水が到達するかをシミュレーションによって確認し、対策を考える必要がある。
6.
高所からの人を降ろすための、用具を準備しておくとともに、訓練も行っておく必要がある。

【身体サーベイ及び線量測定】
・11 日15:50、保安班数名は免震重要棟前の駐車場で、身体サーベイなしで管理区域から避難した作業員のサーベイを開始した。警報付きポケット線量計(以下「APD」)を回収し、個人ID と線量を記録した。
・一方で、直接正門,西門に向かった作業員がいるとの情報を得たことから、11 日17:00 頃、保安班数名を正門、西門に派遣。帰宅しようとする作業員のうち、身体サーベイなしで管理区域から避難した作業員のサーベイを行い、APD を回収し、個人ID と線量を記録した。このサーベイは24:00 頃まで
続けられた。
・免震重要棟内では、防災資機材として配備していたAPD 約50 個を集め、11日16:53 から現場作業者へのAPD 貸出を開始した。貸出の際は氏名と作業場所を記録し、作業終了後のAPD 返却時には線量を記録した。
・サービス建屋の管理区域入口などには、平常時に使用するAPD が約5,000個保管されていたが、多くは津波の影響で使用不能となった。地震発生時に貸し出されていたAPD や津波の被害を受けなかった現場のAPD を回収して、12 日夜頃までには約320 個を確保。適宜充電しながらAPD の貸出管理を行った。 

指摘事項10
1.
事故に備えて測定機器、線量計などの保管場所、予備の必要数、保管方法などについて見直す必要がある。
2.
事故に備えて他の事業所から防護具や測定器具などの貸与を受けられるよう、協定をする必要がある。
3.
緊急時に通勤車両の汚染検査をどうするか決める必要がある。
4.
免震重要棟や守衛所に全身測定機器を配備するか、移動用の機器を検討する必要がある。人数が多い場合の対策も検討する必要がある。
5.
事故時の被ばく管理や汚染検査について作業者の教育内容に入れておく必要がある。

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