日本エネルギー会議

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記録が語る現場の問題点(9)~最終回~

福島第一原発の事故現場で恐怖と戦いながら危機的状況を乗り切った福島原発所員の行動記録がある。それは原発事故を防ぐための、また適切な対応を考えるうえの貴重な資料でもある。読んでいくと、所員たちが何に対して、どのように困ったかが端的に伝わってくる。青字は記録、黒字はそれを読んで考えた私なりの指摘である。

【避難放送等の情報発信】
・発電所及び本店の広報班は、震災当日から発電所の状況やモニタリングデータを数時間毎にホームページに掲載し、情報を発信した。
・11 日20:50、福島県から発電所半径2km の住民に対して避難指示、21:23には内閣総理大臣から発電所半径3km の住民に対して避難指示が出される中、本店立地班は放送文案を作成し、福島県内の民放各局に依頼してラジオでの避難放送を行った。その後もプラントの状況に変化があった際に、ラジオ放送及びTV テロップを依頼するなど、情報発信を継続した。

指摘事項19
1.
インターネット、ラジオ、テレビ、新聞社などに対してどこが誰に依頼して、どのようなタイミングでどのような内容を関係者や住民などに向けた情報提供を行うかについてあらかじめ決めて置く必要がある。
2.
住民に対する避難指示については、複数の方法、指示系統をあらかじめ決めて実施する必要がある。また、人々がスマートフォンでも情報を受けられるようにする必要がある。
3.
避難中、特に初期については停電や基地局や通信網の損害により、避難した日住民がテレビは映らない、携帯電話はつながらないという情報遮断状態を経験した。また、防災無線による避難指示の放送も関連設備の故障が起きれば使用不能となる。これらの情報遮断に関してハイテクに依存する危険性を認識して、ローテク(役場の街頭宣伝車、警察官や地区の当番による各戸声かけ)などの方法も準備しておくべきである。

【協力企業社員,女性社員等の帰宅・避難】
・地震及び津波後、多くの協力企業は、特に必要な人員を除いて発電所から帰宅した。当社社員についても、帰宅できる人は帰宅するよう、11 日17:08に周知した。
・12 日5:15 頃、免震重要棟内に避難していた協力企業社員、女性社員を中心に、自治体指定の避難所へのバス移動を開始した。免震重要棟内への放射性物質の流入を防ぐため、免震重要棟入口に避難者を集めた後、保安班は二重扉を両方開け、避難者を一気に外に出してからすぐに閉めた。避難者は、バスに乗るまで出来るだけ息を止め、ハンカチなどで口を押さえて、放射性物質の内部取り込みが少なくなるようにして、バスに駆け込んだ。2 台のバスにはそれぞれ保安班が同乗し、避難所に向かった。避難所に到着した後、バスから降りる際に保安班が身体サーベイを行い、汚染が無いことを確認してから避難所に入った。
・バスは免震重要棟と避難所を数往復して、避難者を避難所に送り届けた。その後、さらにバス2 台を追加して、避難所への輸送を行った。
・13 日も引き続き避難所への輸送を継続。バス1台を使用し、数回避難場所への輸送を行った。照明、計器復旧によって、プラント状態を把握するための監視手段が少しずつ確保されていく一方、現場は依然として真っ暗で、限られた通信手段の中、余震・津波警報が継続する状況下での対応が続いた。家族の安否確認が出来ない中で対応を続ける社員も多かった。当日勤務ではなかった社員も、家族と一緒に避難所に向かう途中で発電所に行く決意をし、車を降りて発電所に向かった者、地域の消防団で活動した後に発電所に向かった者など、それぞれの状況に応じて発電所に続々と駆けつけた。事態を収束し絶対にここを出て家族に会おうと励まし合ったり、現場で汚染して廃棄処分となる危険性がある中で、もしもの時に自分の身元が分かる手がかりになるかもしれないと思い、家族からもらった大事な時計や指輪をお守りとして身につけて現場に行く運転員もいた。
このような状況の中、発電所長の指揮の下、原子炉注水・格納容器ベント・電源復旧といった事故収束に向けた対応が行われた。
以 上

指摘事項20
1.
構外に避難する人のために、簡易なマスク、手袋、足カバー程度は用意する必要がある。
2.
必要のない人を帰宅させる判断をする人、指示方法、輸送手段をあらかじめ決めて置く必要がある。
3.
行方不明になった場合に身元確認のためのプレートなどを検討する必要がある。行方不明者の発見が容易になるよう、現場に出る際に笛の携行をすることなども有効と思われる。

記録が語る現場の問題点は今回でひとまず終了となります。しかしながら、残された記録は全部で153ページあり、今回(1)~(9)で取り上げた部分はこのうち16ページに過ぎない。今後、機会を見て残りについても指摘事項を書く予定です。
また、指摘内容についても、「準備しておくべき機材」「人の手配」「教育訓練」「規則基準の充実」「情報伝達」などの項目別の取りまとめも必要と考えます。

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