日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

管理の抜け穴

先日、例によって月一回の富岡町の自宅へ一時帰宅をした。帰還困難区域の避難者が立ち入り出来るのは月の中でも限られた日となっている。中継基地のスタッフが休みを取る関係で週に2日は立ち入り日から外される。他にもバスが立ち入る日はマイカーで入れない。どうしても立ち入りたい場合は、町役場に電話して「公益」扱いで許可を取る方法がある。これは自営業が業務上必要であると認めた場合に町役場経由で申請をすることで任意の日に立ち入りが出来る制度で、それを運用で一般の人にも適用する場合がある。今回、希望の日が取れなかったので、町役場に依頼して希望する日の許可を「公益」扱いで受けた。

住んでいる須賀川からマイカーで約2時間、あぶくま自動車道、磐越自動車道を経て、常磐自動車道の富岡インターチェンジを降り、国道6号線に向かって走ると高津戸中継基地(内閣府管轄)が道路際にある。いつもはここで大勢の係員がいて許可証を確認のうえ、個人線量計、緊急連絡用のトランシーバー、足カバーなどの標準装備品、ねずみ忌避剤などが支給される。帰路は再びここに立ち寄って線量計などを返却し、被ばく線量の数値を書いた用紙をもらい、車のタイヤや靴底の汚染検査を受けて持ち出し品があればそれも検査を受ける。

今日は一般の住民の立ち入りは原則休みということで係員が2人のみ。立ち入り許可証を見せ「一時立ち入りです」と告げると、「帰りにお立ち寄りください」というだけで、すぐに出口に誘導された。線量計もトランシーバーも与えてくれる様子がない。変だなと思いつつも帰還困難区域のゲートで貸与するように変更になったのかと考えてそのまま車を走らせた。国道6号線沿いのゲートに到着し、係員に立ち入り許可証を見せるとすぐにゲートを開き始めた。線量計などは準備されていない。

以前は、ゲート直前の国道に警官がいて許可証と身分証明書かわりの免許証の提示を求められ、車のナンバープレートも照合された。さらにゲートで係員がおなじように許可証と免許証(運転者と同乗者も)の確認をしていた。それと比較すると最近は簡素になってきた。個人線量計を着用しているかどうか、トランシーバーを持っているかの確認もなく、そのまま入域が出来たが、もしも他人の立ち入り許可証を見せても車のナンバーも本人確認もしないので、入域できてしまうだろう。帰りはもっと簡単で、許可証をかざして「退域です」と告げるだけで、すぐにゲートを開けて通してくれた。
高津戸の中継基地に立ち寄ると、タイヤと靴底の汚染検査をしただけで「OKです。気をつけてお帰りください」と言われた。結局、本日の一時帰宅による被ばく線量はどのくらいだったかはわからずじまいだった。いままで、立ち入りの都度、被ばく線量を個人ごとに記録したものを帰りに交付されて、それをファイルしておいたが、その記録も今回で途切れてしまった。室内に3時間滞在しても3~5マイクロシーベルトが相場なので、身体への影響は気にすることもないが記録という点ではこれでよいのかという疑問を感じた。

翌日、町役場に電話をして事の次第を話すと「昨日は一時帰宅のない日なので、中継基地はいわゆる「公益」といって自営業や工事関係者向けの体制でした。線量計などを貸与するように声をかけていただくとよかったのですが、中継基地側ともこちらでよく連絡を取るようにし、中継基地の係員と立ち入りされる方と双方から線量計などの貸与について声がけをするように一層徹底します」との返事があった。帰還困難区域に立ち入る人については、内閣府に記録があがっており、問い合わせればいままでの分については回答が得られるという。ただし、今回のようなことがあれば記録には残らない。町では健康被ばく手帳を配布しているので、各人がそれで管理してほしいとのことだ。

フリーダイアルで「放射線に関する相談窓口」がある。規制庁の管轄だが、そこに今回の件を例に、避難している人の放射線管理は自主管理になっているのかそれとも国で管理しているのかを質問してみた。電話に出た担当者はそれについてはここではわかりません。町など自治体に聞いてくださいという返事だった。

「この窓口の設置主旨は何なのですか」
「放射線に関する一般的な質問に答え、住民の不安を取り除くことです。で すから、特定のことについては回答出来ません。そのような質問やご意見があったことは報告します」
「それでは、原発事故により避難した人が帰還困難区域に入った際に、どのくらい被ばくしたかを知るには一般的にどのような方法、例えば線量計を着用とかがあるのかを教えてください」
「それに対してもお答えしかねます。そのような質問と意見があったことを記録し、報告させていただきます。」
「誰に報告するのですか」
「このサービスは原子力規制庁が管轄していますので、規制庁の広報部門です」
 「こちらは一般的な質問をしていると思うのですが、何故答えないのですか」
「今のご質問についてもその内容を記録し、報告をあげさせていただきます」
それ以降、どのように質問をしても「記録して、報告する」と同じ返事を繰り返すばかりだった。いったい何を恐れてそのような返事をするのだろうか。 
担当者はボランティアではないと言っていたから、税金でこのシステムを運用する委託費などを賄っていると思われる。私が事故前から心配している「形式主義」の見本のような気がした。やっていますというアリバイつくりの質問コーナー設置ではあるまい。規制庁の広報部門の担当者が、あがってきた意見を握りつぶさないことを期待したい。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter