日本エネルギー会議

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大工を殺すにゃ

「大工殺すにゃ刃物はいらぬ。雨の三日も降ればよい」とは昔のことわざだが、
原発にとって規制基準の強化は大工にとっての雨に相当しそうだ。

スウェーデンのバッテンフォール社は先月下旬、同社の原発の中で最も古いリングハルス1、2号機の運転期間を当初予定より10年も短縮し、2018年~2020年に閉鎖するとの方針を発表した。両炉を早期閉鎖する理由として、同社は採算性の低下と発電コストの上昇を挙げている。

電力価格の上昇が見込めない状況で、新たな安全要件を満たすための投資や原子力発電に課されている税金が経営の重荷になると判断した。同社の発電事業部門長も「良好に機能している原子炉の閉鎖はもちろん残念だが、これはビジネス上の判断であり、時として避けがたいことだ」とコメントしたと報じられている。

原発も生産工場であることを考えれば、その存続には経済性が重視されることは当然だ。福島第一原発の事故後、規制基準が見直され、その結果、古い原発が次々と廃炉を決めた理由も新たな基準に適合させるには投資額がその後に予想される発電量に見合わないということだった。

事故トラブル、大型の自然災害、自然現象に関する新たな知見、新たな住民の要求などが起きる度に、規制基準の見直しがされることになっている。経済産業省は5年前に発表した原発の発電コスト10,1円/キロワットアワーを今回0.2円上げて10,3円とした。これも新基準適合のための追加工事費を計算に入れたためだ。

いままでも、すでにある安全規制が長年の実績からそこまでは不要と判断したような例は少なく、逆に国内外の事故やトラブルによって追加される例ばかりだ。そもそも原子力規制委員会は経済性など自分たちの考えることではないと言っている。基準を決める際にはそれに適合させるためにどの程度のコスト高をもたらすかなどと考えはしない。そのうえ「安全であるとは申しあげられない」と再三委員長が記者会見で述べている。規制委員会による審査の長期化も原発の運転期間を一年、また一年と食いつぶしながら、電力会社の財務体質を蝕み、現場力を低下させている。

そう考えると、原発は刃物ではなく規制基準の見直しという真綿で首を締められているということになりそうだ。

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